SSブログ

抗酸化物質に鎮痛作用----麻薬とOTC薬の中間薬として有望 [抗酸化剤]

 抗酸化物質系の鎮痛薬が,モルヒネなど中毒性麻薬の有望な代替薬となる可能性がある。オハイオ州立大学(OSU,コロンバス)生理学・細胞生物学のRobert Stephens教授らは,合成抗酸化物質が後肢に炎症を生じたマウスのほぼ4分の3で,実際に疼痛様行動を消失させることを見出した。研究結果はBehavioural Brain Research(2006; 173: 211-216)に掲載された。

<フリーラジカルを中和>
 研究責任者のStephens教授は「鎮痛薬に関して言えば,イブプロフェンやアスピリンなどOTC鎮痛薬と,モルヒネなど処方せん薬の麻薬との中間の選択肢がほとんどない」と述べている。

 さらに,同教授は「これら両極の中間的な薬剤が必要とされる。慢性疼痛に苦しむ患者は,モルヒネなど強力な鎮痛薬の依存症,あるいは中毒症にさえなりうる」と説明している。

 慢性疼痛はきわめて厄介な疾患であるため,2001年1月1日を「疼痛管理と疼痛研究の10年」の開始日とする法案が2000年に米連邦議会を通過した。

 抗酸化物質は,細胞を損傷するフリーラジカルを中和する。体内では常にフリーラジカルが産生されるが,健常な組織がこの有害物質を不活性化し,そのレベルを抑制している。問題が生じるのは,なんらかの理由でフリーラジカルが生体の自然防御を超えて産生される場合である。研究者らは,この産生過剰を癌やアルツハイマー病などの疾患と関連付けた。

 過去10年間に,フリーラジカルが慢性疼痛の原因にもなることを示唆するいくつかの研究が発表された。フリーラジカルは抑制されない状態にあると体内に蓄積し,既に損傷した組織をさらに傷害する。

 同教授による研究を含め,少数の研究において,抗酸化物質が生体によるフリーラジカルの除去を促進させることにより,慢性疼痛を抑制する可能性が示唆されている。

 同教授は「抗酸化物質の鎮痛効果は新しい研究分野である。米食品医薬品局(FDA)は抗酸化物質を慢性疼痛の治療薬としては承認していないが,将来は抗酸化物質を含有する薬剤が開発されるであろう」と述べている。


<類似の研究も利用可能性を示唆>
 Stephens教授らは,まず3種類の合成抗酸化物質のうち1種類をマウスに注射した。対照群のマウスには,生理食塩液のみを注射した。この研究で用いられた抗酸化物質はフェニル-N-t-ブチルニトロン(PBN),4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL),N-アセチル-L-システイン(NAC)で,果実や野菜に含まれるものと同一ではない。現在,PBNとTEMPOLは科学目的でのみ利用可能で,NACは栄養補助食品として利用可能である。

 同教授は「現在,抗酸化物質が有望な鎮痛薬であることを明らかにしようと試みている。他の研究者らによる類似の研究で,これらの抗酸化物質が利用可能性の最も高いものであると示唆された。また、ある種の食品は鎮痛効果を有する抗酸化物質を含有する可能性が高いが,それらの物質に関しては鎮痛薬としての体系的な試験が行われていない」と述べている。

 抗酸化物質あるいは生理食塩液の注射直後,刺激薬のホルマリンを各マウスの左後肢に注射した。ホルマリンは炎症を惹起し,マウスに疼痛様行動を誘発する。その後30分間,各マウスが炎症肢をなめる,あるいはかむ時間を測定した。この種の行動は動物が疼痛あるいは不快感を知覚していることを示唆している。

<急性期の疼痛を大幅に抑制>
 30分間の観察時間は,3つの異なる時間帯に分けられた。5分間の急性期には,生体が最初に疼痛を知覚し反応する。5〜15分後は生体に備わる機構を用いて疼痛の抑制を試みるため,比較的平静な期間となる。最後の15〜30分後は強直期と呼ばれる期間となり,マウスは再び激しく炎症肢をなめる,かむなどの行動を始める。この現象は,依然として疼痛や不快感が知覚されていることを示唆している。

  3種類の抗酸化物質は,急性期と強直期の双方においてマウスが炎症肢をなめる,あるいはかむ時間を顕著に減少させた。急性期における疼痛様行動を70〜90%,また強直期における同様の行動を78〜98%減少させることが報告された。

 Stephens教授は「特に急性期にマウスでこのような大幅な疼痛の軽減が見られたことは驚きで,抗酸化物質は疼痛様行動を先制的に抑制すると思われる」と述べている[MT誌07年3月1日 (VOL.40 NO.9) p.41]。


コメント(0) 
共通テーマ:健康

コメント 0

           医療用医薬品が買える! 三牧ファミリー薬局

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。