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だからタミフルは無罪です、とはいきません(改訂版)。


①インフルエンザ14歳男子、タミフル服用せず飛び降り(読売新聞 - 03月24日)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070323ik06.htm

②タミフル飲み9歳女児が異常行動、インフル感染なし(読売新聞 - 03月29日)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070329ik05.htm

 早くからタミフルの害について、学会で発表し警告し、厚労省にも警告文書を送ってきた、NPOJIPの浜先生がコンパクトにこう仰っている(HP:http://www.npojip.org)。

>1.睡眠剤・鎮静剤など中枢抑制剤による異常行動は薬理学の常識
>2.タミフル服用後の異常行動は同じことが強く現われたもの
>3.害作用がもっと強く現われれば呼吸が止まって突然死する

>タミフルは脳の働きを抑制することが動物実験と人に起きる症状から分かっていま
>す。睡眠剤や鎮静剤、麻酔剤、アルコールと同じです。アルコールを飲むと、寝て
>しまう人、興奮して暴れる人などがいます。

 1.&2.の通り、タミフル以外の薬で、飛び降りは起き得ない訳ではない。しかし、まず確認すべきことは、他の薬でも起きる可能性があるからといって、タミフルで起きないということには全くならない、ということだ。

 特に「タミフルは恐いから、別の薬をください」と言われ、タミフルなら抗ウィルス剤でありながら熱も下がるので、解熱剤を併用せず出してなかった医師も、タミフルが出せなかったから代わりに解熱剤を出し、さらに他薬も追加・併用した可能性が高いのではないか。受診している以上は、必ず投薬をしていたはずだからである。

 ①の記事の読売新聞のサイトでこんな例が紹介されている。
>千葉内の調剤薬局には「病院で『タミフルは10代の子に処方しないことになった』
>と言われた」と、代わりに抗生物質の処方せんを持った患者の親が訪れた。「イン
>フルエンザなら抗生物質は効かないはずだが……」と薬剤師は戸惑う。

 白衣を着ていても医師の非科学性はかくのごとし。「インフルエンザは自然に治る自己限定的疾患。タミフルの添付文書にも実は書かれている。積極的な治療は不要」だと親を知識の無さから説得できず(収入を考えて)する気も無く、とにかく何か薬を出すという、町医者のこの姿勢。

>一方、小児の専門治療を行う国立成育医療センターは、タミフルについて、発熱期
>間を1日程度短くできるが、嘔吐や腹痛などの副作用の頻度が比較的高い、などと
>説明した文書を患者に配布。羽鳥文麿・救急診療科医長(59)は「インフルエンザ
>の“万能薬”のイメージがあるが、積極的に使うべき薬とは考えていない。患者さん
>や親には、理解を求めている」と話す。 

 ちなみに知識のある、責任ある立場の医師はこうなのである。

 世界では絶対に子供には使わない強烈なメフェナム酸やジクロフェナクというNSAIDSを使って、日本(と台湾)だけで「インフルエンザ脳症」という医原病を発生させてしまった(大人も死んでいる)ことをまだ知らずに、インフルエンザ=高熱=脳症と思いこまされている人々がいる。 海外では、もし使うならアセトアミノフェン[パラセタモール]だけというエビデンスが確立していたのに、である。
 死亡例では、子供にボルタレン座薬とポンタールシロップと、解熱剤をダブルで出していた馬鹿医師までいるのである。信じられない。ライ症候群の教訓を日本の大半の医師が理解していなかったからである。スペイン風邪は、第一次大戦期の、ストレス度最高で栄養最低という免疫力最低の条件下で、なおかつ医療がお粗末だった時代故の死者数なのに、現代でも同じことが起こるかのように情報操作されてしまっているが、実はもう一つ忘れていることがあって、当時の唯一の対症療法薬であったアスピリンの使用率が高かったことがあるのだ。そう、すなわち、今で言う「ライ症候群」が原因なのだ。医学生諸君には、海外の文献などから、医学史的知識をもっと厳密に学んでもらわねば困るのだ。

 現在は厚労省がアスピリンなどサリチル酸系NSAIDs、ジクロフェナクNa(ボルタレン)、メフェナム酸(ポンタール)を15才未満の子供の発熱に使用を禁忌にしている。しかし、こんなことは欧米では当然で、パラセタモール(アセトアミノフェン)が昔から第一選択なのだ。日本小児科学会がこれを勧告したのは平成12年11月だ。遅過ぎる。これも散々、浜先生方が、有無を言わせぬ証拠を厚生省につきつけてきた結果やっとこさでである。

 海外で解熱剤脳症など滅んで久しいのである。それをインフルエンザの高熱による脳症と信じ[こまされ]ているのである。日本で解熱剤を投薬する程度の熱では、特殊なケースを除き、海外では絶対に解熱剤は用いない。

 そもそもタミフルが1才未満の乳児に投与禁止された理由は、動物実験で、生後間もないラットの脳内に高濃度に移行することが確かめられたからだ。

 脳が毒物にやられたら動物はすぐにアウトである。だから、脳を守るため、「血液ー脳関門」(BBB;Blood-Brain Barrier)という組織がある。例えば、これがあるために脳腫瘍には抗癌剤が届かず効かないくらいである。
 で、成人はこれが一応完成しているとされているが、子供は不完全、特に乳幼児に至ってはいうまでもない。だから人間の乳児にも禁止されたのだ。

 では、1歳ちょうどなら安心なのか。1歳2ヶ月では? 1歳3ヶ月では……安全性は確立されているのか。親の立場ならエピデンスが気になるはずである。2歳なら安全か、3歳なら……6歳になって小学生なら、中学生なら絶対安全なのか、ということである。そうでなかったことは今回のケースでよく分かったはずだ。
 ヒトには遺伝的な個人差もある訳だから、それも含めて、まともな想像力の持ち主なら安全性が気にならないはずはない。勿論国際的に確立したそんな細かいエピデンスは「存在しない」。

 血液-脳関門の関門機構はある種の細胞の密着結合などに由来すると、これまでは解釈されてきた。しかし最近の研究では「実はいったん脳内皮細胞に取り込まれた異物がトランスポーターの働きで能動的に<血液中に汲み出されている>ために正味の脳移行が制限されている」ことが明らかにされている。  

 つまり、何らかの理由で、この能動輸送の「汲み出し」側の能力・能率が落ちれば、脳から血液側に排出できない訳だから、血液−脳関門の能力は変化するということになる。
 実は病態下では、この「血液ー脳関門」の性能が、大人さえ落ちることが知られている。すなわち、一般的に、健康時よりも薬剤の脳内移行度が高まりやすい、という傾向があるということである。だから、例えば、大人でもタミフル服用後に乗用車ごと海に飛び込んで死亡したケースがある。

 ましてや、高熱の上に多剤服用時などはむちゃくちゃになる可能性が高い。ジクロフェナクなどの解熱剤投与以外での大人の脳症の死亡例はこの多剤服用例だった。 中学生で複数の薬剤を処方されていては、その可能性もある。

 薬物代謝酵素p450というものがある。あまり詳細に説明するのはさけるが、例えば、日本人は酒に弱い人が多いので顔が赤くなる者が多いが、それはアルコールを代謝するアルデヒド脱水素酵素の性能の遺伝子的な差異による。

 p450薬物代謝酵素にもそうした遺伝子的な能力差がある。だから、例えば、睡眠薬を分解するp450酵素の性能の個人差には数十倍の差があり得るので、普通の人の服用量でも、酵素の能力が遺伝的に弱い人は分解出来ないせいで血中濃度が高くなり、いわば5倍・10倍飲んだのと同じになり、2日間も目が覚めない、などということも起こり得るのだ。

 上の内容は、薬物代謝について教科書的な話なのに、それも確認できていない段階で①の記事を発表するのは、科学者の態度ではない。陰謀家のそれではないのか。

 そもそも海外では風邪だろうがなんだろうが、投薬は普通多くても3剤までである。5剤も出せば、殺す気か!と疑われる(笑)。副作用は1剤で平均4%、3剤で25%、4剤で50%を超すというデータがあるからだ。
 そして一般に、薬の副作用は、その相互作用や、薬物代謝酵素チトクロームP450の競合阻害による血中濃度の増加などもあって、相加的にではなく<相乗的に>増加するものであるからだ。

 なのに、過去、風邪やインフルエンザに平気で抱き合わせ処方を出してきたバカ医師どもがいた。

 ウィルス疾患には無意味な抗生物質(肺炎や溶連菌感染と鑑別診断できねば医師ではないし、肺炎への予防投与は効果無し)を投与し、国際的にエピデンスの無いきつい解熱剤を与え、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤、去痰薬、これだけ飲むと胃が荒れるからと胃腸薬、果ては、発熱させ免疫力をブーストしてウィルス疾患を治すという作用機序であり解熱剤と併用など論外の筈の葛根湯などの漢方薬まで抱き合わせるに至っては、その単純な足し算思考、薬理学の基礎すら怪しい脳味噌に驚きを禁じえない。

「たくさん薬を出す医師はヤブ」ということが知られてきた最近は、流石にここまで出すことは少なかろうが、タミフルを処方できないからと、解熱剤を中心に複数の薬を出せば、こじれない保証はない。 それで患者の薬物代謝能が低ければ、何があってもおかしくない。

 記事の「一旦下がった」のに「飛び降り、搬送されたときは高熱だった」ということから、受診時に解熱剤が出て、それで下がったために、こじれた可能性がある。併用薬の数と種類は必ず併記すべきなのに、それもない簡易な情報が流されている。

 そもそも、ウィルス感染症で高熱になるのは生体の合目的的反応である。白血球の貪食能も抗体産生も自前のインターフェロン合成量も高熱でなければ上がらない。高熱が必要だから上がるのだ。ウィルスとの戦いが終わり、回復の目処が立ち、必要でなくなれば熱を下げるというのが生体の調節機能である。それは高校生物の常識だ。

 この記事は、細かな付帯状況を一切報じずに「タミフルを飲まなかったが飛び降りた」→「インフルエンザ一般のせいだ」→「だから飛び降り一般もタミフルのせいではなかった」と思いこませたい向きからの「情報操作」の匂いが濃厚である。市民は要注意である。

 インフルエンザ一般で異常行動の例が数多くあるのか、といえば、米国食品医薬品局(FDA)もタミフル発売以前にそんなことはないと認めているのだ。

 世界中のほとんど=80%近くという異常な量のタミフルを日本はたった一国で使用しているのである。

 そして、タミフルの場合は、「中枢抑制」で熱が「下がってから」異常行動が起こる訳である。

 ところが、①の記事のケース=「病院搬送時に熱があった」ということは、いわゆる「熱譫妄」であった可能性がある。さらに、複数投薬で、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤、テオフィリンなどを用いれば譫妄を起こしやすいことが知られているのだ。

 熱が高い時に起こる「熱譫妄」で異常な言動・行動が起こることはある。しかしタミフルの異常行動は熱が下がってから起こるので、熱譫妄ではあり得ない。ここを意図的に混同するように今までも情報が操作されていたし、今回もそこを利用して情報が流されていることに、市民は注意をすべきであると思う。

【追記】
  また②の記事が、①の記事の後に発表された。タミフルを安易に飲まされたが、後でキットで調べたらインフルエンザではなかった[のに異常行動が出た]と判明した例である。これは①の記事による情報操作を憂えた筋から、「インフルエンザのせいではなかったのですよ」「タミフルという薬剤のせいですよ」という情報=警告を通して、操作されないように提供したと思われる。

 これは単なる両論併記的報道ではないだろう。「記者クラブ制度」=思考停止した新聞記者どもに対しての、当局からの情報リークなのだから、明らかにソース側=厚労省サイドにも抵抗勢力と進歩派のせめぎ合いがあることが見て取れる。



NPOJIP 医薬ビジランスセンター
『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No79
 タミフルは10代だけでなく全年齢で禁止に!
  http://www.npojip.org/sokuho/070321.html


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catsduke

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by catsduke (2007-03-24 05:25) 

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