減らないビタミンD欠乏症----乳幼児と成人に多様な障害招き、慢性疾患リスクにも関与 [ビタミンD]
ボストン大学のMichael F. Holick教授は、ビタミンD欠乏症に関するレビューをNew England Journal of Medicine(357: 266-281)に発表し、食品にビタミンDを強化しているにもかかわらず、ビタミンD欠乏症は小児と成人で依然として多いことを指摘。「子宮内と小児期におけるビタミンD欠乏症は発育遅延と骨格変形を引き起こし、後年の股関節骨折リスクを増加させる恐れがある。また、成人のビタミンD欠乏症は骨減少症と骨粗鬆症を誘発または増悪させ、骨軟化症と筋力低下を引き起こし、骨折リスクの増加につながる」と述べている。
<癌や高血圧・うつ病とも関連>
Holick教授によると、ビタミンDの影響は筋肉と骨にとどまらない。十分な量のビタミンDは一般的な癌・多発性硬化症・関節リウマチ・変形性関節症・感染症・高血圧・うっ血性心不全・統合失調症・うつ病・肺疾患・喘鳴性疾患などの慢性疾患リスク減少に関与している。
今日では人体の組織と細胞の大半がビタミンD受容体(VDR)を有することが明らかになっており、数種類の組織には血液中に存在する不活性型ビタミンDを活性型へ変換できる酵素機構があることが知られている。
例えば、閉経後の女性に関するランダム化比較試験では、ビタミンD摂取を1,100IUに増量した女性では癌の相対リスクが60~77%減少していることが明らかになった(Lappe JM, et al. American Journal of Clinical Nutrition 85: 1586-1591)。
<1日800IU以上が必要>
ビタミンD欠乏症の検査について論じられているが、評価分析は高額で、必ずしも実施できない場合があるため「小児と成人で1日に最低約800IUのビタミンD3、もしくはこれに相当する量を摂取している場合には、軽減事由がない限りビタミンDが充足していることを保証すべきである」とレビューは述べている。 逆に、これだけの摂取が得られていない場合、臨床医は患者がビタミンD欠乏症の可能性が高いことに注意すべきである。
というのも、多くの人々にとって、800IUの摂取は、脂肪分の多い魚を頻繁に食べている場合を除いて容易ではないからである。日光浴により、十分なビタミンDは得られるが、一方で皮膚癌リスクの上昇を伴う。従って、身体のビタミンD必要量を充足するには、適度の日光浴〔またはUV-B曝露〕とビタミンDサプリメントを使用する。実際、現在では多くの公衆衛生機関が800IU/日以上という値を推奨している。
Holick博士によると、体内におけるビタミンDの状態についてのバロメーターは、血清25-ヒドロキシ-ビタミンD値であり、この型のビタミンについては十分な検出レベルにあり、商業的分析を勧めている。
ラジオイムノアッセイでは、25-ヒドロキシ-ビタミンD2とD3を含めた総25-ヒドロキシビタミンD値を測定する。民間の臨床検査施設のなかには、25-ヒドロキシ-ビタミンD2とD3を液体クロマトグラフィーと直列型分光検査法を用いて測定し、それぞれの測定値を報告するところもある。合計値が30ng/mL以上であれば、患者のビタミンD値は充足しているとされる。
しかし、すべての分析が有用なわけではない。1,25-ジヒドロキシ-ビタミンD分析は、ビタミンD欠乏症の検出に用いてはならない。なぜなら、続発性上皮小体(副甲状腺)機能亢進症では、正常値あるいはそれ以上の値を示すからである。
<欠乏症の予防に適度な日光浴も>
ビタミンD欠乏症リスクが高い人の多くに対しては、同症を予防し、治療する特別な方策を講じる必要がある。例えば、ビタミンDのサプリメンテーションをまだ受けていない1歳以下の母乳哺育児は、予防のためにビタミンD3 400IU/日の投与と適度な日光浴をさせるべきである。維持量は連日ビタミンD3_400~1,000IUである。
冬季など日光曝露が不十分な年長児は、予防のためにビタミンD3_400~1,000IU/日と適度な日光浴をさせる。維持量は連日ビタミンD 400~1,000IUである。
50歳を超える成人と冬季などで日光曝露の不十分な成人は、予防のためにビタミンD3 800~1,000IU/日もしくは2週間~1か月ごとにビタミンD2_50,000IUの投与、または十分なUV-B照射を受けるべきである。維持量は2週間または1か月ごとにビタミンD2_50,000IUである。
妊婦と授乳婦は、予防のためにビタミンD3_1,000~2,000IU/日もしくは2週間ごとにビタミンD2_50,000IUの投与、または十分な日光浴やUV-B照射を受けるべきである。維持量は2週間または4週間ごとにビタミンD2_50,000IUである。
吸収不全症候群患者は、血清25-ヒドロキシ-ビタミンD値の変化に応じて、十分な日光浴またはUV-B照射、あるいは連日または隔日、あるいは毎週ビタミンD2_50,000IUの投与を受けるべきである。予防のための維持量は毎週ビタミンD2_50,000IUである。
<肥満にも投与が必要>
ステロイド受容体と生体異物受容体を活性化させる薬剤、または臓器移植に用いる薬剤を使用している患者は、隔日または毎週ビタミンD2_50,000IUの投与を受けるべきである。予防のための維持量は、毎週または2週間あるいは4週間ごとのビタミンD2_50,000IUである。
肥満患者は、ビタミンD3 1,000~2,000IU/日、または1~ 2週間ごとにビタミンD2_50,000IUの投与を受けるべきである。予防のための維持量は毎週または2週間もしくは4週間ごとのビタミンD2_50,000IUである。
腎炎症候群患者は、予防のためにビタミンD3 1,000~2,000IU/日、あるいは週1回または 2回、ビタミンD2_50,000IUの投与を受けるべきである。維持量は2週間または4週間ごとのビタミンD2_50,000IUである。
ステージ2および3の慢性腎疾患患者は、予防のために血清リン酸塩のコントロール、ならびにビタミンD3_1,000IU/日または2週間ごとにビタミンD2_50,000IUを要する。維持量は2週間または4週間ごとのビタミンD2_50,000IUである。これらの患者で十分なビタミンDが得られているときには、活性型ビタミンDアナログによる治療も要することがある。
ステージ4と5の慢性腎疾患患者は、1,000IU/日のビタミンD3または2週間ごとのビタミンD2_50,000IUの投与を要する。予防のために1,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3または活性型アナログによる治療の必要がある。
<50,000IU/日超の用量は危険>
原発性または三次性副甲状腺機能亢進症患者は、予防のために連日ビタミンD2_800~1,000IUまたは2週間ごとに同50,000IUの投与(血清カルシウム値は上昇しない)を要する。維持量は2~4週間ごとに同50,000IUである。
肉芽腫性疾患患者と一部のリンパ腫患者は、ビタミンD3_400IU/日を要する。予防のための維持量は1か月当たりビタミンD2_50,000IUである。
Holick博士は、健康なすべての成人と、ビタミンD欠乏症の高リスク状態のすべての成人に対し「目標は血清25-ヒドロキシ-ビタミンD濃度約30~60ng/mLを達成することである。医師は状況に応じた臨床判断を行いながら、これらのガイドラインを用いるべきである」と述べている。ここに示した25-ヒドロキシ-ビタミンD値をnmol/Lに換算するには2.496を乗じる。
論文では、まれとされるビタミンD中毒についても触れている。それによると、50,000IU/日を超える用量は危険である。重要なことに、慢性肉芽腫性疾患患者は、血清25-ヒドロキシ-ビタミンD値の上昇に感受性を示す恐れがある。しかし、これらの患者は、続発性副甲状腺機能亢進症を発症する恐れがあるため、ビタミンD欠乏症を避けなければならない。[MT誌07年11月1日 (VOL.40 NO.44) p.62]
【コメント】
ビタミンDに関しては、以下の一般書・専門書を参考にしてください。
平柳 要『がん予防に実は「日光浴」が有効なわけービタミンDの驚きの効力』講談社+α新書(2008)
*最新の概説書。巻末のヴィタミンDに関する論文リストは医療専門家にも役立つ。但し、ビタミンD以外のビタミンに関する記述には勇み足が見られます(笑)。
岡野登志夫『ビタミンDと疾患ー基礎と臨床からの考察』 医薬ジャーナル社(2000)
中村・松本・加藤『骨代謝と活性型ビタミンD』ライフ・サイエンス出版(2006)
この記事を見れば、恫喝のように「脂溶性ビタミンの過剰摂取は怖い」とされ、かつて定められてきた推奨量が、いかに恣意的であったか、そのプロパガンダによって、これらの欠乏によって起こりうる疾患が健康自主管理されずに、医療資本の「専売特許」的に囲い込まれ治療されてきた事実が分かります。
過去、アメリカ・カナダや欧州などで栄養量法を行ってきた医師たちの用いてきた量は妥当だったことが分かります。
<癌や高血圧・うつ病とも関連>
Holick教授によると、ビタミンDの影響は筋肉と骨にとどまらない。十分な量のビタミンDは一般的な癌・多発性硬化症・関節リウマチ・変形性関節症・感染症・高血圧・うっ血性心不全・統合失調症・うつ病・肺疾患・喘鳴性疾患などの慢性疾患リスク減少に関与している。
今日では人体の組織と細胞の大半がビタミンD受容体(VDR)を有することが明らかになっており、数種類の組織には血液中に存在する不活性型ビタミンDを活性型へ変換できる酵素機構があることが知られている。
例えば、閉経後の女性に関するランダム化比較試験では、ビタミンD摂取を1,100IUに増量した女性では癌の相対リスクが60~77%減少していることが明らかになった(Lappe JM, et al. American Journal of Clinical Nutrition 85: 1586-1591)。
<1日800IU以上が必要>
ビタミンD欠乏症の検査について論じられているが、評価分析は高額で、必ずしも実施できない場合があるため「小児と成人で1日に最低約800IUのビタミンD3、もしくはこれに相当する量を摂取している場合には、軽減事由がない限りビタミンDが充足していることを保証すべきである」とレビューは述べている。 逆に、これだけの摂取が得られていない場合、臨床医は患者がビタミンD欠乏症の可能性が高いことに注意すべきである。
というのも、多くの人々にとって、800IUの摂取は、脂肪分の多い魚を頻繁に食べている場合を除いて容易ではないからである。日光浴により、十分なビタミンDは得られるが、一方で皮膚癌リスクの上昇を伴う。従って、身体のビタミンD必要量を充足するには、適度の日光浴〔またはUV-B曝露〕とビタミンDサプリメントを使用する。実際、現在では多くの公衆衛生機関が800IU/日以上という値を推奨している。
Holick博士によると、体内におけるビタミンDの状態についてのバロメーターは、血清25-ヒドロキシ-ビタミンD値であり、この型のビタミンについては十分な検出レベルにあり、商業的分析を勧めている。
ラジオイムノアッセイでは、25-ヒドロキシ-ビタミンD2とD3を含めた総25-ヒドロキシビタミンD値を測定する。民間の臨床検査施設のなかには、25-ヒドロキシ-ビタミンD2とD3を液体クロマトグラフィーと直列型分光検査法を用いて測定し、それぞれの測定値を報告するところもある。合計値が30ng/mL以上であれば、患者のビタミンD値は充足しているとされる。
しかし、すべての分析が有用なわけではない。1,25-ジヒドロキシ-ビタミンD分析は、ビタミンD欠乏症の検出に用いてはならない。なぜなら、続発性上皮小体(副甲状腺)機能亢進症では、正常値あるいはそれ以上の値を示すからである。
<欠乏症の予防に適度な日光浴も>
ビタミンD欠乏症リスクが高い人の多くに対しては、同症を予防し、治療する特別な方策を講じる必要がある。例えば、ビタミンDのサプリメンテーションをまだ受けていない1歳以下の母乳哺育児は、予防のためにビタミンD3 400IU/日の投与と適度な日光浴をさせるべきである。維持量は連日ビタミンD3_400~1,000IUである。
冬季など日光曝露が不十分な年長児は、予防のためにビタミンD3_400~1,000IU/日と適度な日光浴をさせる。維持量は連日ビタミンD 400~1,000IUである。
50歳を超える成人と冬季などで日光曝露の不十分な成人は、予防のためにビタミンD3 800~1,000IU/日もしくは2週間~1か月ごとにビタミンD2_50,000IUの投与、または十分なUV-B照射を受けるべきである。維持量は2週間または1か月ごとにビタミンD2_50,000IUである。
妊婦と授乳婦は、予防のためにビタミンD3_1,000~2,000IU/日もしくは2週間ごとにビタミンD2_50,000IUの投与、または十分な日光浴やUV-B照射を受けるべきである。維持量は2週間または4週間ごとにビタミンD2_50,000IUである。
吸収不全症候群患者は、血清25-ヒドロキシ-ビタミンD値の変化に応じて、十分な日光浴またはUV-B照射、あるいは連日または隔日、あるいは毎週ビタミンD2_50,000IUの投与を受けるべきである。予防のための維持量は毎週ビタミンD2_50,000IUである。
<肥満にも投与が必要>
ステロイド受容体と生体異物受容体を活性化させる薬剤、または臓器移植に用いる薬剤を使用している患者は、隔日または毎週ビタミンD2_50,000IUの投与を受けるべきである。予防のための維持量は、毎週または2週間あるいは4週間ごとのビタミンD2_50,000IUである。
肥満患者は、ビタミンD3 1,000~2,000IU/日、または1~ 2週間ごとにビタミンD2_50,000IUの投与を受けるべきである。予防のための維持量は毎週または2週間もしくは4週間ごとのビタミンD2_50,000IUである。
腎炎症候群患者は、予防のためにビタミンD3 1,000~2,000IU/日、あるいは週1回または 2回、ビタミンD2_50,000IUの投与を受けるべきである。維持量は2週間または4週間ごとのビタミンD2_50,000IUである。
ステージ2および3の慢性腎疾患患者は、予防のために血清リン酸塩のコントロール、ならびにビタミンD3_1,000IU/日または2週間ごとにビタミンD2_50,000IUを要する。維持量は2週間または4週間ごとのビタミンD2_50,000IUである。これらの患者で十分なビタミンDが得られているときには、活性型ビタミンDアナログによる治療も要することがある。
ステージ4と5の慢性腎疾患患者は、1,000IU/日のビタミンD3または2週間ごとのビタミンD2_50,000IUの投与を要する。予防のために1,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3または活性型アナログによる治療の必要がある。
<50,000IU/日超の用量は危険>
原発性または三次性副甲状腺機能亢進症患者は、予防のために連日ビタミンD2_800~1,000IUまたは2週間ごとに同50,000IUの投与(血清カルシウム値は上昇しない)を要する。維持量は2~4週間ごとに同50,000IUである。
肉芽腫性疾患患者と一部のリンパ腫患者は、ビタミンD3_400IU/日を要する。予防のための維持量は1か月当たりビタミンD2_50,000IUである。
Holick博士は、健康なすべての成人と、ビタミンD欠乏症の高リスク状態のすべての成人に対し「目標は血清25-ヒドロキシ-ビタミンD濃度約30~60ng/mLを達成することである。医師は状況に応じた臨床判断を行いながら、これらのガイドラインを用いるべきである」と述べている。ここに示した25-ヒドロキシ-ビタミンD値をnmol/Lに換算するには2.496を乗じる。
論文では、まれとされるビタミンD中毒についても触れている。それによると、50,000IU/日を超える用量は危険である。重要なことに、慢性肉芽腫性疾患患者は、血清25-ヒドロキシ-ビタミンD値の上昇に感受性を示す恐れがある。しかし、これらの患者は、続発性副甲状腺機能亢進症を発症する恐れがあるため、ビタミンD欠乏症を避けなければならない。[MT誌07年11月1日 (VOL.40 NO.44) p.62]
【コメント】
ビタミンDに関しては、以下の一般書・専門書を参考にしてください。
平柳 要『がん予防に実は「日光浴」が有効なわけービタミンDの驚きの効力』講談社+α新書(2008)
*最新の概説書。巻末のヴィタミンDに関する論文リストは医療専門家にも役立つ。但し、ビタミンD以外のビタミンに関する記述には勇み足が見られます(笑)。
岡野登志夫『ビタミンDと疾患ー基礎と臨床からの考察』 医薬ジャーナル社(2000)
中村・松本・加藤『骨代謝と活性型ビタミンD』ライフ・サイエンス出版(2006)
この記事を見れば、恫喝のように「脂溶性ビタミンの過剰摂取は怖い」とされ、かつて定められてきた推奨量が、いかに恣意的であったか、そのプロパガンダによって、これらの欠乏によって起こりうる疾患が健康自主管理されずに、医療資本の「専売特許」的に囲い込まれ治療されてきた事実が分かります。
過去、アメリカ・カナダや欧州などで栄養量法を行ってきた医師たちの用いてきた量は妥当だったことが分かります。
2007-11-03 03:37
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