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喘息患者の授乳が子供の肺機能に影響 [疫学研究]

 ウィスコンシン大学とアリゾナ大学・呼吸器センターのTheresa W. Guilbert博士は、住民対象研究で出生時から思春期まで追跡した小児1,246例の呼吸機能データを検討し、喘息でない母親から長期の母乳哺育を受けると小児期の肺機能が改善し、気流への影響はほとんどないが、喘息の母親から長期間にわたる母乳哺育を受けた小児では肺の発育の向上は認められず、気流が少ないとの解析結果を"Effect of Breastfeeding on Lung Function in Childhood and Modulation by Maternal Asthma and Atopy"という論文(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2007; 176: 843-848)で発表した。

<母乳哺育期間が関係>
 母乳で育てられた小児は下痢や耳感染症が少なく、乳幼児期の喘鳴の発生率も低いことが明らかにされているが、母親が喘息の場合、よい影響ばかりではないようである。

 Guilbert博士は同センターの研究者らとともに、小児1,246例を出生時に登録し、思春期まで追跡調査を行った前向き住民対象研究「ツーソン小児呼吸研究」のデータを解析した。登録例のうち、11~16歳時に肺機能検査を受け、乳児期の母乳哺育に関する完全なデータが得られた679例を今回の解析対象とした。肺機能検査はスパイロメトリーを用いて行い、肺容量(努力肺活量、FVC)と気流〔1 秒量(FEV1.0)と 1 秒率(FEV1.0%)〕を測定した。

 解析の結果、FEV1.0%が母乳哺育例で低かった。母親のアレルギーと喘息を考慮して解析したところ、喘息またはアレルギーを有する母親の小児にのみ気流低下と長期(4か月間以上)の母乳哺育との間に関連が認められた。
 同博士は「アトピーと喘息がない母親から母乳哺育を受けた小児は、肺容量が増大し、気流の減少は見られないが、喘息の母親から 4か月以上の母乳哺育を受けた小児には肺容量の増大は見られず、気流の有意な減少が認められた。これは喘息を有する母親の子で喘息リスクが高い理由の1つに、肺の発育変化があることを示唆している」と述べている。

<母乳の成分が肺の発達を促進>
 Guilbert博士は、喘息ではない母親の母乳には肺の発達を促進する成分が含まれていると考えており、サイトカイン・腫瘍壊死因子・上皮増殖因子やプロスタグランジンなどの関与が有力としている。サイトカインの中でも特に腫瘍増殖因子(TGF)-β1はエラスチンの産生にかかわる物質で、肺の構造や機能に不可欠である乳児が摂取する母乳に含まれるTGF-β1量は、乳児の喘鳴の発生率と逆比例することがわかっている。

 同博士は「今回の知見は、母乳中の成長因子が肺の発達を促す可能性があり、母乳哺育に喘鳴予防効果があることを説明する一要因であることを示唆している」と述べている。

 動物実験でも、今回の研究結果を裏づける結果が得られている。最近行われたマウスの実験では、喘息のない母マウスから出生した仔マウスを、喘息の母マウスに哺育させたところ、気道過敏性と気道炎症が増強した。
 ただし同博士は、これらの知見が臨床面に及ぼす影響はいまだ不明であるとし、「母乳は乳児にとって最適な栄養で、数多くの有益性が立証されていることから、ただ1件の研究結果に基づいて母乳哺育に関する推奨の変更を勧めるのは賢明ではない」と注意を促している。[MT08年1月24日(VOL.41 NO.4) p.87]


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