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北大チームの画期的な研究ーー引退名選手の復帰も可能になる? [先端医療]

ひざ軟骨の自然再生に成功=スポーツ治療に光明----北大グループ(時事通信社 - 11月30日 16:01)

 運動で負荷が掛かり、故障しやすいひざやひじの関節。北海道大大学院の安田和則教授(整形外科)らの研究グループは、不可能とされてきた関節軟骨の自然再生に、ウサギを使った実験で成功したと30日までに発表した。ひざを痛めた中高年層やスポーツ選手のけがの治療に応用できる可能性があるという。論文はドイツの学術専門誌「マクロモレキュラー・バイオサイエンス」電子版に掲載された。

 安田教授によると、2種類のゲル状高分子化合物を北大が開発した独自の手法で組み合わせ、軟骨に分子構造が似た新たなゲル素材を開発。ウサギのひざ関節軟骨の欠損部に埋め込んだところ、4週間で軟骨が再生した。副作用は出ていない。
 
 元記事で言及されているのは、Macromolecular Bioscience (Published Online: 21 Nov 2008)の論文で、タイトルは、"A Novel Double-Network Hydrogel Induces Spontaneous Articular Cartilage Regeneration in vivo in a Large Osteochondral Defect"(新たなダブルネットワーク・ハイドロゲルは、重度の骨軟骨欠損部にインビボで関節軟骨の自然な再生を誘導する)である。


 安田和則先生は、北大医学部で、膝関節外科/スポーツ医学がご専門である。日本を代表する膝関節の専門医であり、米国整形外科スポーツ医学会会員であり、靭帯再建術をすべて関節鏡視下手術でなさることでも知れる通り、日本関節鏡学会の理事もなさっているし、北大病院ではスポーツ医学診療科(火・木)の外来診療をなさっている(なお北大病院の当該医局の医師は日本ハムのチームドクターをしている)。


 先生は、特に膝靭帯損傷の治療に関しては、国際的にも指導的立場にある方である。

ABSTRACT
 We have developed a novel method to induce spontaneous hyaline cartilage regeneration in vivo for a large osteochondral defect by implanting a plug made from a double-network hydrogel composed of poly(2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid) and poly(N,N-dimethylacrylamide) at the bottom of the defect, leaving the cavity vacant. In cells regenerated in the treated defect, type-2 collagen, Aggrican, and SOX9 mRNAs were highly expressed and the regenerated matrix was rich in proteoglycan and type-2 collagen at 4 weeks. This fact gave a significant modification to the commonly established concept that hyaline cartilage tissue cannot regenerate in vivo. This study prompted an innovative strategy in the field of joint surgery to repair an osteochondral defect using an advanced, high-function hydrogel.


[アブストラクト](Catsduke訳)
 我々は、重度な骨軟骨欠損に対して、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とN,N-ジメチルアクリルアミドを組み合わせて作ったダブルネットワーク・ハイドロゲルからなるプラグを欠損部の基底部に埋め込み、インビトロで硝子軟骨の自然再生を誘導する新たな手法を開発した。処置後に再生された細胞内では、II型コラーゲン、アグリカンとSOX9 mRNAが高レベルで発現しており、4週では再生マトリクスはプロテオグリカンとII型コラーゲンが増加していた。この事実は硝子軟骨組織は生体内では再生できないという通念に著しい修正を迫るものである。本研究は関節外科の分野において、高機能なハイドロジェルを用いた骨軟骨欠損の修復に革新的なストラテジーを促した。


 松井選手や清原選手のように、スポーツ選手が膝の軟骨をオペで対症療法的にいじると、普通は再生しないので、絶対に縮小再生産的に機能が落ちて行かざるを得ず、引退を速めるだけの結果に陥りがちである。

 しかし、この研究では、2種類のゲル状高分子化合物を組み合わせた、軟骨に分子構造が似た新素材によって、再生が可能だという画期的な技術が開発されたことになる。
 安田研究室では、上述の二つのゲル網目を組み合わせて、水分を90%以上も含みつつも、従来のゲルの何百倍もの強度を持ち、生体軟骨に匹敵するほどの丈夫さを有する「ダブルネットワークゲル」の発明に成功した訳である。こうしたゲル素材の研究は、生体類似性が高く、低摩擦で、しかも衝撃吸収性にも優れる人工関節の研究にも生かせるものと言える。

 この研究は、論文の共著者を参照すれば分かるとおり、北大大学院の理学研究院・生命科学部門生命理学部門生命融合化学分野・ソフト&ウェットマター研究室の龔 剣萍教授や長田義仁名誉教授(理化学研究所・基幹研究所副所長)との共同研究である。

 上で言及されているSox9遺伝子とは、現在20種以上が同定されているSry-type HMG box遺伝子の一つで、発生過程で主として軟骨組織特異的に発現が認められるものである。ヒトにおけるSox9の遺伝子変異が大腿骨・脛骨の彎曲・角状変形を特徴とする骨系統疾患である彎曲肢異形成症(Campomelic dysplasia)の原因となることが報告されている。
 さらにSox9タンパクは軟骨の代表的な細胞外マトリクスであるII型コラーゲンの遺伝子上の特定の塩基配列に結合し、II型コラーゲン遺伝子の転写活性を増加させることが報告されていて、Sox9は軟骨組織特異的に発現する転写因子として関心が持たれている。
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