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QOLを高める癌治療における漢方併用療法1 [東洋医学]

第46回 日本癌治療学会 総会ワークショップより

人参養栄湯は抗癌剤による血小板減少を抑えて抗癌剤の抗腫瘍効果を落とさない

田中哲二 先生(和歌山県立医科大学医学部産科・婦人科学教室 准教授)

 抗癌剤の副作用の1つである血小板減少症には血小板輸血が行われるが、血小板輸血は抗血小板抗体産生を誘発、癌患者の余命を縮める場合も少なくない。また現在、血小板減少を抑えるための特効薬は開発されていない。
 
 田中先生は、人参養栄湯(TJ-108)を使って血小板減少症を予防し、抗癌剤治療を行い効果を上げておられる。

「卵巣癌の患者さんに、まず1コース目にCPT-11とカルボプラチンを投与したところ、血小板数が1.7万(/μL)に下がり、やむなく血小板を輸血して乗り切りました。癌が縮小していたので2コース目も同じ抗癌剤を投与した際に人参養栄湯も投与、血小板最低値は6.4万で経過して血小板輸血を行わずに済んだのです(白 涛ほか『産婦人科漢方研究のあゆみ19』診断と治療社,2002,p.149)」と症例を挙げた田中先生は、以下の3点を検証された。
 1.なぜ人参養栄湯は抗癌剤の副作用である血小板減少を抑えるのか。
 2.漢方薬は抗癌剤感受性を抑制しないのか。
 3.漢方薬の中でも人参養栄湯が最適なのか。

「別の卵巣癌の患者さんで、抗癌剤の1コース目は血小板が6~7万に下がったもののあまり減少はしませんでした。2コース目を行ったところ、1コース目より下がってきたため、3コース目に人参養栄湯を併用したところ、血小板は10万以上を維持しました。この患者さんの人参養栄湯投与コースでの血清中のさまざまな骨髄系幹細胞増殖促進サイトカインを測定しました。変動はなく、人参養栄湯は骨髄系幹細胞増殖促進サイトカインに直接影響を及ぼしているわけではないと考えられます(深山雅人ほか『産婦人科漢方研究のあゆみ18』診断と治療社,2001,p.97)」と述べられた(図1)

 図1人参養栄湯はCTP(CAP)療法誘発血小板減少を予防する

 次に、人参養栄湯の作用機序を明らかにするため、成熟雌ラットから大腿骨髄細胞を取り出し検証された。抗癌剤を添加すると骨髄細胞死を招くが、成人男性の人参養栄湯服用血清を添加すると、骨髄細胞死を抑制した。

 また、人参養栄湯は抗癌剤感受性を減退させるかどうか検討された。これまで、抗癌剤とともに人参養栄湯を併用して効果をあげた具体的な症例をいくつか示し、田中先生は「私自身が、担当した卵巣癌、子宮体癌、子宮頸癌等でCPT-11を使った患者さんで癌消失、縮小等の評価可能病変を有する20人の患者さんのうち有効だった人17人、奏効率85%。パクリタキセル+CBDCA療法を行った患者さんでは奏効率94.4%。すべて人参養栄湯を併用しています。これらの奏効率は抗癌剤だけを投与した時の一般に報告されている奏効率よりはるかに高く、少なくとも人参養栄湯は臨床的に癌細胞の抗癌剤感受性を下げてはいないことがわかります」とおっしゃる(図2,3)。

 図2人参養栄湯併用CPT-11化学療法を行った(評価可能病変有)患者の治療成績


 図3人参養栄湯併用パクリタキセル+CBDCA化学療法を行った(評価可能病変有)患者の治療成績

 また、田中先生はラットの幹細胞を用いて他の漢方も検討、骨髄幹細胞増殖を刺激する可能性の高い漢方薬をスクリーニングなさっている。最後に「人参養栄湯よりも、血小板減少を抑える可能性のある漢方薬もあります。人参養栄湯では少なくとも1週間か10日ぐらいで血小板の数値は上昇しますが、もっと効く可能性のある漢方薬も複数あります。実際に数日で血小板数を上昇させる漢方薬もあります」と語られた。

[ツムラツムラメールマガジン85号より転載紹介]
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