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ホメオパシーの無効性を嗤うーー【書評】予防接種は果たして有効か? [代替療法]

トレバー・ガン(由井 寅子 訳)『予防接種は果たして有効か?』ホメオパシー出版(2003)

 元・国立衛生研感染症室長・母里先生や小児科医・毛利先生方が『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』誌で仰るように、現行のインフルエンザワクチンなどの、免疫学的にも疫学的にも有効性の怪しい幾つかの予防接種は、明らかに無効で一利無し(医療経済的にはゼロではなくマイナス)なのは当然で、心ある医療関係者はそう思っている。

 問題は、そのことをホメオパスが主張したとして、ホメオパシーの有効性の証明を補完するものにはなりえぬというシンプルかつ根本的な事実だ。本書も、そこを抜きにして内容を云々することは不毛であろう。
 ちなみに評者は、20数年前に初めてその療法の存在を知ったとき、興味を抱き、英米からホメオパシーに関する洋書や一流メーカーのリメディを輸入して自ら試し(バッチ・フラワーリメディも含む。当時は税関も無知だったため、アルコール入りリメディにも気づかず輸入できた)、動物実験も行ってきたが、結局、プラセボほどの効果もなかった。残念ながら、ホメオパシーは「信仰」以外の何物でもないだろう。

 というのも、ホメオパシーにはプラセボ二重盲検法で効果有りとする結果は皆無に近いからだ。即ち、効果があったにせよ、論理的には最高でもプラセボと同等である----つまりホメオパシーは所詮「プラセボ」に過ぎないということなのだ。 
 つまり、ヨーロッパの医大で自然療法の一つとして教育課程で扱っているにせよ、ハーブ療法のように生化学的基礎の有るものとしてより、プラセボの一つとしての要素が強い訳だ。

 というのは、レメディも「無限小」の原則で希釈・作製されれば、モル数なら分子数0=法律的には「乳糖錠」に過ぎず、化学物質として、標的器官・部位に化学変化に基づく正作用を与え得ぬ以上、副作用も起こり得ず、従って「安全」だから認めているだけで、患者が治り、医療費抑制につながり得るなら「方便」として何でも使う欧州のしたたかさを感じるからである。

 例えば、英国ではヒーラーの手かざしにさえ保険が効くが、ヒーラーは国家登録制で、怪しげな新興宗教の人間ではない者による心理的癒しで治ってもらえば、長期の薬物治療より安く上がるから許可しているという、したたかさを感じる。ホメオパシーの扱いもその程度のものに評者には思える。

「ダイナマイゼシション(振盪)」で「水に薬剤の記憶を与える」ことによって希釈しても元の物質の「情報」は保存されるが、薬品としての濃度は下がるので副作用は無くなるという主張はトンデモな戯言である。
 「信者」が<科学的>説明として頻繁に持ち出す「水素結合による水のクラスター化から、水が情報を保存できるのだ」という考えは、「πウォーター」というイカサマ高価格水の論理にも通ずるが、物理学においては水のクラスター理論は70年代に終わった理論だとされているのだ。
 というのも、高校物理/化学レベルでも自明(絶対零度やブラウン運動を想起するだけで十分)だが、熱運動によって位置も速度も乱雑に変わるという水の分子の転位の早さからは、10のマイナス12乗秒以上にわたって安定に保たれるような水分子の配置はなく、いかなる情報も保存できるはずもないからだ。

 いずれにせよ、結局「濃度が低い方が効く」というホメオパシーの原則は、彼らの言うアロパシーたる現代医学で、医薬品一般が、中毒域以下の濃度で薬物として作用するため、濃度によって正に「毒にも薬にもなる」という事実の、原始人的なまでの拡大解釈であり、所詮、ホメオパシーはアロパシーの陰画[ネガ]に過ぎないのだ。

 例えば、ヒ素は中毒を起こすが「薄めて」医薬品とすれば白血病薬となり得るし、中毒症状と白血病の症状に類似点が有るからといって、ヒ素のレメディが両方を治し得るというような考えは単なる思いつきで、実際は大半の化合物において、こうした類似性が見られることは皆無に近い。

 そもそも、たかだか200年かそこらのホメオパシーは、漢方やアユルヴェーダに勝てる訳がない。その原理が正しければ、ハーネマンという一個人が発見する前に、彼一人が観察し得た程度の薬理現象と人間の反応との相関関係があったとするなら、それは数千年前から中国やインドで既に発見され検証され体系化されていた筈だからだ。
【下】Samuel Hahnemann


 なお、評者たる私は、日本相補代替医療学会/日本統合医療学会の正会員でもある。しかし、トンデモ代替医療は「悪貨が良貨を駆逐する」が故に徹底的に排斥すべきだという考え方である。

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