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【馬鹿騒ぎに抗うシリーズ】救急領域と漢方医学1「救急医学における漢方診療」 [東洋医学]

領域別入門漢方医学シリーズ 「ツムラ・メディカルトゥディ」08年10月29日放送
「救急領域と漢方医学」 熊本赤十字病院 総合内科 加島 雅之 先生

(1)救急医学における漢方診療
1. 救急医学における漢方診療の意義
 救急医学は多くの場合で西洋医学の独壇場である。それは現代の西洋医学がしばしば 「A・B・C」と呼ばれる、救急救命において最初に治療・維持しなくてはならないバイタルの基本である気道・呼吸・循環管理において非常にすぐれた方法論を確立しているためであり、かつて治療が不可能であった頻度の高い致死的疾患に対して有用な診断法と治療法を確立出来たからに違いない。
 これは、古代の漢方医書で治療不能とされた疾患に対して現代医学で診断法と治療法があり、外科治療・臓器補助療法・臓器移植など神話の中で語られた治療技術まで開発できていることでも分かる。また、救急の場では瞬時の病態改善・症状緩和が求められることが多いが、西洋医学では循環・神経作動薬などの即効性が期待できる薬剤の開発が出来ている。

 ただ、一方では西洋医学も万能ではなく、実は救急外来で最も多く遭遇する内科系疾患であるウイルス感染症に対しては漢方治療の方が即効性もあり有効と感じることも多い。また、よく救急の現場で遭遇する不安発作や身体化障害に対して即効性をもって対処可能な選択肢として漢方薬が存在するのも事実である。さらに重篤者で入院させることとなった後の管理においても西洋医学で難渋する問題の解決に漢方が寄与する局面も多い。

2. 救急医学での漢方診療の特徴
 救急医学で求められる漢方診療の特徴としては、第1に即効性が期待できること。第2に、痛み・動悸・めまい・嘔吐・下痢・発熱などの救急でよく遭遇する愁訴に対して強く症状をコントロールすることが出来ること。第3に漢方医学的には主に気や気の熱量的性質に特化した存在である陽と津液の病態を扱うことが多いこと。これは、血の病態は慢性疾患に関与することが多いことと、即効性を期待できる病態が比較的に少ないことによる。

 また、五臓の病態を救急の場で漢方で治療することは現在の日本の医療環境では難しく、一般に漢方の五臓の病態と認識される状況は西洋医学で治療されるか、通常外来での漢方診療の対象となる。第4には相対的に補法より瀉法や理気・利水などの滞りをめぐらせる方法論が用いられることが多い。第5に細かい弁証より主要な病態をまず改善させることが優先される。第6に西洋医学的治療との役割分担の明確化が必要となる。第7に簡便性とすぐに投与が可能ということから特に救急外来ではエキス剤の使用がその中心となるといったことがあげられる。これらの特徴を踏まえた実際の診療の内容は次回以降に詳述する。

3. 救急医学で漢方診療が応用できるシチュエーション
 漢方診療に求められている内容やその治療効果をあげるスピード感に違いがあるため、 救急医学のシチュエーションを救急外来と重篤病態のために入院した以降の状況に分けて論ずることとする。

 まず、救急外来で漢方診療が応用できる局面は最も多いのはウイルス感染症である。対処療法に終始する西洋医学よりも高い効果が期待できる。特にややこじれて来た中期~慢性期のウイルス感染症に対する対処法は驚くほどに西洋医学の方法論は適切な治療法がない。

 しかし、漢方には有効な方法論が多く存在し、また細かな弁証を行わなくても数多くの症状・病態に対処できることも多い。
 救急外来に受診する愁訴の中で比較的おおいものの中に頭痛があるが、機能性頭痛でも症状が強く、通常の鎮痛剤やヒスタミン受容体拮抗薬でも取りきれない頭痛を呈することがある。こうした際に漢方薬を使用する価値は十分にあり、特にある種の病型の頭痛に関しては即効性を持ちかつ著効することも多い。
 確かに西洋医学の鎮痛剤や止嘔剤は強力で即効性があるものが多く、効果も安定しており救急外来の現場で頻用される。しかし、妊娠や基礎疾患・常用薬との相互作用などの関係でそれらの薬剤が使用できない局面もしばしば目にする。こうした際に代替薬として漢方薬を大いに力を発揮することも多い。

 重篤病態で入院後の患者では呼吸循環管理において西洋医学のダイナミックな治療において状態安定となる場合は多い。こうした、いわば西洋医学の独壇場といえるところでも、今一歩コントロールが難しい状況、たとえば気管支喘息発作で入院加療し標準療法を行 っているにも関わらず、なかなか喘鳴が消失しない状況や、敗血症性ショックで入院し大量輸液を行って循環は安定したが全身は浮腫を来している状況でなおかつ血管内脱水があり利尿剤投与だけでは治療が困難な場合などには、漢方療法が有効な局面が存在する。

 また、呼吸循環管理は安定したが、栄養管理や創傷治癒・臓器不全の回復に対しては西洋医学では積極的に働きかける方法論は少なく、こうした状況下で漢方診療の果たす役割は大きい。

 こうした救急疾患における漢方処方の運用の場合にも漢方概念を応用することは重要である。比較的簡単な漢方概念を意識するだけでも驚くほど処方の応用範囲が広がり、また治療効果を高めることが出来る。

4. 救急での漢方診療をする場合に頻用する基本の漢方概念
 気 :流れる性質をもつエネルギー。体を温め、体を動かすなどの生体の働きの一切は気によるもの。
    また、体内のガスも気として認識される。
 陽 :気の中で熱に働くように特化した存在。
 血 :物質としては血液のこと。しかし、働きは臓器の潤い円滑さを保ち、栄養を行う。
津 液:血以外の正常な体液の総称。乾燥を防ぎ、過熱を抑制する。

五臓
 心:意識と循環を支える。
 肺:呼吸と気の生産を支える。
 脾:消化吸収支え、気・津液を円滑に運行させる。
 肝:気と血の流れる量・方向をコントロールすることで、感情・月経を支配する。
 腎:根源的な生命力を蓄える場であり、全身の津液の代謝を調節。成長・老化、生殖、尿の産生を支配する。


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