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II型糖尿病患者の多くでHb値が低下----貧血の予防・管理方法に重要な示唆 [糖尿病]

 豪・メルボルン大学と提携しているMerlin C. Thomas博士らによる研究で、II型糖尿病患者におけるヘモグロビン(Hb)値の推移が検討された。その結果は、糖尿病患者における合理的な貧血予防・管理方法の開発に重要な示唆を与えるものとなる。詳細は米国腎臓財団(NKF)のAmerican Journal of Kidney Disease(48: 537-545)に発表された。

[腎疾患患者よりも低下]
 慢性貧血が多くの糖尿病患者に見られることは、複数の研究で示されている。糖尿病患者の貧血有病率は慢性腎疾患を併発している非糖尿病患者と比べて高く、また貧血をより早期に発症することも報告されている。糖尿病患者では、著しい腎障害がなくても腎性貧血が起こりうる。Hb値が低下している糖尿病患者では、入院や早期死亡など不良なアウトカムに至るリスクも上昇することが知られている。このリスク上昇は、糖尿病性腎症の合併や重症度とは無関係である。

 同一の糖尿病クリニックに通院しているII型糖尿病患者(503例)を5年間追跡した今回の前向きコホート研究で、被験者のHb値は全体的に1年で0.07g/dL低下することが示された。
 糖尿病患者では、10年以上前に始まった血管の障害が進行した結果として貧血が起こると考えられる。 試験開始前に貧血が見られた被験者は12%であったが、5年間のフォローアップ期間中さらに13%で貧血が発現した。研究期間中にHb値の変動に対する介入は行われなかった。Hb値の低下が最も大きかったのは、試験開始前にマクロアルブミン尿・腎障害・または大血管疾患が診断されていた患者だった。試験開始前の腎障害がHb値低下の最も大きな危険因子だった。

 細小血管疾患患者では、糸球体濾過値(GFR)の低下とともにHb値が低下していた。GFRが90mL/分/1.73m2以上の患者や尿アルブミンが正常な患者では、5年間のフォローアップ期間中もHb値は安定していた。従来の方法で管理された貧血の被験者のHb値は1年で0.09g/dL低下した。この低下はHbA1c値と関連していたが、腎機能とは関連しなかった。

 尿アルブミン値が高い患者・腎障害または大血管疾患を合併する患者・高齢患者の3人に1人以上でHb値の低下が見られた。Thomas博士らは、腎機能や尿アルブミンが正常な患者のスクリーニングはあまり意味がないであろうとしている。

[貧血治療で意見分かれる]
 糖尿病患者が貧血を発症した場合の対処方法については意見が分かれている。貧血が是正されれば、神経機能や運動耐性が改善される。糖尿病と心不全を合併する患者でエリスロポエチンを使用すると、入院期間の短縮や心機能分類の改善が期待できる。しかし、高血圧や末梢血管抵抗の増加といったエリスロポエチンやアナログ製剤による有害な作用が発現する恐れもある。貧血是正の便益を検討した過去の複数の大規模臨床試験では、決定的な結果は得られなかった。

 Thomas博士は現在、このテーマで大規模臨床試験を行っている。同博士はNature Clinical Practice Nephrology(2007; 3: 20-30)で「糖尿病における貧血リスクの上昇は、糖尿病性腎症に伴う尿細管間質の変化を反映するものと考えられる尿細管間質が傷害を受けると、正常な造血機能に不可欠な間質線維芽細胞、毛細血管、尿細管細胞の間のデリケートな相互作用が阻害される特に腎でのエリスロポエチン合成とHb値の関連が切断されてしまうことが、貧血を発症させる重要な因子であると思われる。全身性の炎症・造血機能の低下・エリスロポエチン抵抗性・赤血球生存期間の短縮も、腎調整力低下を背景とした貧血を促進する」と述べている。

 糖尿病性腎症・高齢・大血管疾患などの危険因子を持つ患者では、年に1回あるいは2年に1回のスクリーニングで貧血の早期発見が可能となる[元記事:MT誌07年6月7日 (VOL.40 NO.23) p.29]。

【コメント】
 わが家のタマも昨年末に糖尿病性ケトアシドーシスで、ネオベッツ夜間ERに担ぎ込んで以来、糖尿病です。一旦、インスリンを離脱しましたが、その後、食堂閉塞から半流動食的な物しか食べられなかったため、裏ごしする手間を惜しんで簡便だったa/dを二ヶ月食べさせたところ再発してしまい、ネコに良く効いていたPZIが使えなくなった昨今のことですから、ご多分に漏れず、ランタス(グラルギン)で治療中です。

 やはり貧血が進行し、一時は予後が危ぶまれましたが、本ブログに紹介している記事を参考に、活性酸素による幹細胞の被曝障害が貧血を招くという知識から、点滴のC(500mg SID)以外にもバイオフラボノイド(血管壁の弾力を取り返す意味もある)+ビタミンEという抗酸化ビタミンに加え、抗酸化剤でもあり、ネコにとってはビタミンであるナイアシンアミド(B-3。人間は生合成可能だがネコには不可能)を投与しました[井上訳『レドックス制御と抗酸化治療戦略』などにB-3を使ったβ細胞温存による糖尿病治療が紹介されています]。

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ライフスタイルの改善でアジポカイン代謝に変化 [糖尿病]

 蘭・マーストリヒト大学・ヒト生物学のEva Corpeleijn教授は、ライフスタイルへの介入研究において典型的に観察されるインスリン感受性およびHbA1c値の改善は、レプチン値の低下などのアジポカイン代謝の改善が介在していると見られると、ハンガリーのブタペストで4月22日〜25日に開かれた第15回欧州肥満学会で報告した。

【代謝改善のマーカーへの期待も】
 この研究には99年に開始され、06年に終了したStudy on Lifestyle-Intervention and Impaired Glucose Tolerance Maastricht(SLIM)データの暫定的分析が含まれている。
 SLIM研究の1年目の結果を発表したCorpeleijn教授は「糖尿病予防には、肥満およびインスリン抵抗性と戦わなければならないが、これは食事や運動の改善で達成可能である。そこでライフスタイルに介入する研究を計画し実行した」と説明した。

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高齢者の抑鬱症状がII型糖尿病の発症と関係する可能性 [糖尿病]

 抑鬱症状を有する高齢者は、II型糖尿病を発症しやすいというデータが、ノースウェスタン大学等のグループにより、Archives of Internal Medicine(167:802-807)で発表された。

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歯周病と糖尿病を巡って [糖尿病]

<歯周炎がII型糖尿病患者の腎疾患発症に関係>

 歯周炎がII型糖尿病患者の顕性腎症と末期腎疾患(ESRD)の発症に関係していることを示す研究結果を、米国立衛生研究所(NIH)などのグループがDiabetes Care(2007; 30: 306-311)に発表した。

 この研究は,アリゾナ州のGila River Indian Communityの住民を対象に行われた。II型糖尿病があり,歯周炎の検査を1回以上受けたことのある25歳以上の成人で,ベースライン時に糸球体濾過値が正常でマクロアルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比300mg/g以上)がないことが確認された529例が追跡対象となった。被験者はベースライン時の歯の本数と歯槽骨スコアから,歯周炎がないか軽度の無・軽度群107例,中等度群200例,重度群117例,無歯群105例に分類された。

 22年間の追跡で,193例(36.5%)がマクロアルブミン尿陽性の顕性腎症を,また68例(12.9%)がESRDを発症した。年齢と性を調整後,顕性腎症とESRDの発症頻度は歯周炎の重症度に伴って上昇した。

 さらに,糖尿病罹病期間,喫煙習慣,body mass index(BMI)を加えた場合の顕性腎症の発症頻度は,歯周炎が無・軽度群と比べ中等度群では2.0倍,重度群では2.1倍,無歯群では2.6倍高かった(P=0.01)。同様に,ESRDの発症頻度もそれぞれ2.3倍,3.5倍,4.9倍高かった(P=0.02)。
 同グループでは「歯周炎の治療がII型糖尿病患者の腎疾患リスクを低下させるかは今後の検討課題」としている。

【コメント】
 心疾患との関連は以前から言われてきている歯周病菌の問題ですが、例えば、以前にもこういう記事があります。

《慢性歯周病が糖尿病の危険因子の可能性》
 米・マーケット歯科大学(ウィスコンシン州ミルウォーキー)歯周病学のAnthony Iacopino歯学博士は、慢性歯周病は糖尿病を引き起こすかもしれないと、当地で開かれた米国歯周病学会(AAP)/米国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR)の歯周と全身の相関とに関するシンポジウムで報告した。  糖尿病患者が歯周病になりやすいことは既に立証されているが、今回の研究は,逆に歯周病が糖尿病の危険因子であることを示唆している。

 歯周病は、細菌が血流に入り免疫細胞を活性化する活性化された細胞は、全身に破壊効果をもたらす炎症性の生物学的シグナルであるサイトカインを産生する膵臓では、インスリンを産生する細胞が、慢性的に高レベルにあるサイトカインによって、損傷あるいは破壊される

 同博士は「いったんこうなると、たとえ糖尿病の危険因子をほかに持っていない健常者でさえも、II型糖尿病になってしまうかもしれない」と説明した。糖尿病患者では耐糖能異常ではなく、高脂血症が歯周病の有意な危険因子と見られる。そのためQOLを向上させたいと思っている糖尿病患者にとって、低脂肪食や抗高脂血症薬、運動のような脂質低下療法は、口腔衛生と同様にきわめて重要である。また、これらのアプローチは、糖尿病ではないが高コレステロールの患者にとっても有益な効果をもたらすかもしれない。
 歯周病が糖尿病を引き起こすかどうかを立証する次のステップは、臨床観察研究と歯周病完治後に糖尿病リスクが減少するかどうかを調べる介入試験を行うことである。

 AAPのMichael McGuire会長は「歯周病が心疾患・早産・呼吸器疾患患者と同様、糖尿病患者においてどのような役割を果たしているかについて、介入研究の結果が得られないうちは、総合的に健康を維持し、歯を保持するために口腔衛生に注意することが最良の方法である」と述べた。
(元記事:http://www.perio.org/consumer/aapnidcrdiabetes.htm)。

【参考】
 Anthony Iacopino博士の、糖尿病と歯周病関連の論文です。
"Periodontitis and Diabetes Interrelationships: Role of Inflammation"
「歯周病と糖尿病の相互関係:炎症が有する役割」
Annals of Periodontology Dec 2001, Vol. 6, No. 1: 125-137.


【Catsdukeによるアブストラクト訳】
 糖尿病は、生活の質と寿命との双方に影響するような、数種の深刻な合併症を持つ全身性の疾患である。それらの合併症として知られるものの一つが歯周病である。  歯周病は局在性の口腔感染症であるが、最近のデータでは歯周病が全身の生理機能に変化を引き起こす可能性が示唆されている。歯周病と糖尿病の相互関係は、口腔感染の素因となる全身性疾患の一例を提供し、一旦感染が成立すれば、口腔感染が全身性疾患を増悪させるこの場合、口腔感染は全身性疾患の素因となる可能性をも持ち得る

 こうした循環的な関係に関わる細胞/分子機構を理解する為には、諸条件の共存下での相乗作用を生みだすような、糖尿病と歯周病に関連する通常の生理的諸変化を同定しなければならない。炎症の広範な軸と、特異的免疫細胞の表現形質と、血清脂質レベルと組織の恒常性に、潜在的なメカニズムの繋がりが想定される。  糖尿病誘発性の免疫細胞機能の諸変化は、炎症性細胞の表現形質を作り出す(単球/多形核白血球由来の炎症性サイトカインの発現上昇と、マクロファージ由来の増殖因子の発現低下)。このことが慢性の炎症と進行性の組織破壊の素因となり、組織の修復能を減弱する。細菌のバイオフィルムから発する物質で絶えず傷ついているせいで、歯周病組織には、繰り返しこのような変化が顕われる。

 糖尿病患者は 血糖値が十分コントロールされていても、LDLコレステロールと中性脂肪値が上昇しがちである。このことは重要であり、最近の諸研究は、高脂血症は糖尿病誘発性の免疫細胞の変化に伴う諸要素の一つであることを示している。最近のヒトの諸研究では高い血清中脂質と歯周病との間の相関関係は確立されている。今日、いくつかのエビデンスは、歯周病自身が高いLDLおよび中性脂肪をもたらすことを示唆している

 歯周病誘発性の菌血症/内毒血症は、IL-1βとTNF-αのような血清中の炎症性サイトカインの上昇を引き起こすことが示されており、それが高脂血症に繋がる脂質代謝の変化を生むことが実証されている。この文脈では、歯周病は、炎症誘発性サイトカイン/血漿中脂質の上昇に対してと、慢性の高脂血症および炎症性メディエーターの一方もしくは両方によって引き起こされた全身性の疾患に対しても強力に寄与しているだろうこれらのサイトカインは、糖尿病に見られるのと同じインスリン抵抗性症候群をもたらし、糖尿病の進行に通ずる膵島β細胞の破壊を惹起するそれ故、歯周病は、糖尿病誘発性高脂血症や免疫細胞の変化や組織修復能の減弱を悪化させる可能性を持つ上、慢性の歯周病は糖尿病をも誘導するだろう

"Association Between Periodontitis and Hyperlipidemia: Cause or Effect?"
Journal of Periodontology Dec 1999, Vol. 70, No. 12: 1429-1434.

"Heightened Gingival Inflammation and Attachment Loss in Type 2 Diabetics With Hyperlipidemia"
Journal of PeriodontologyNov 1999, Vol. 70, No. 11: 1313-1321.


【追記】
 また、最新のこのテーマに関する論文のアブストラクトも中国語論文のPubMed英文よりCatsdukeが以下に翻訳しました。

Meng HX.(北京大学・口腔医学教室病院・歯周病部門)
Beijing Da Xue Xue Bao. 2007 Feb 18;39(1):18-20.
「歯周病と糖尿病の関連」(北京大学雑誌)
 本論文は、歯周病と2型糖尿病との関連に焦点を当てたものである。糖尿病が歯周病に対して重要な病因論的役割を果たしているというエビデンスは既に膨大に存するその上、歯周病は、糖尿病・循環器疾患・呼吸器疾患・妊娠合併症のような全身性疾患の発生率と重症度に対する強力かつ複合的な影響を有している。  歯周病と糖尿病の関連は過去20年間における十分なエビデンスによって支持されている:(1)糖尿病は慢性歯周病の非依存性リスクファクターである、 (2)代謝調節は慢性歯周病の予後を改善し得る、 (3) 慢性歯周病の治療は代謝のレベルを改善し得る。2型糖尿病患者を持つ家族における歯周病の状態に関する我々の最近の研究は、この関連性を更に確実なものにした。  コントロール群の家族と非糖尿病の家族の成員の間に歯周病のパラメターに何の違いもないのに、糖尿病家族成員の歯周ポケット(PD)やアタッチメントロス(AL)や歯牙喪失数のような歯周病の指標は、非糖尿病の家族と比して有意に高かったことが示された。

 2型糖尿病の進行とその合併症においては、最終糖化反応物(AGEs) とそのレセプターが重要な要素として認識されるべきであった。AGEsとAGEsのレセプター (RAGE) の分布は、様々な組織において、高度に一致している。我々の研究室の一つの研究では、全身的に健常な慢性歯周病患者よりも、歯周病を持つ2型糖尿病患者から摂取した歯肉組織の方がRAGEが強く発現しており、AGE-RAGE回路が2型糖尿病患者の歯周病の進行に関係することを示すことで、RAGEの発現はTNF-αの発現と正の相関を有していることを実証した炎症はインスリン抵抗性と脂質代謝異常によって特徴づけられる前糖尿病前症を誘導することが知られている。

 しかし、今だ明らかでないのは、歯周病は2型糖尿病のリスクファクターか否かということである。最近の諸研究では、多数の侵襲性歯周病(AgP)患者の血清中の中性脂肪とグルコースの平均レベルは、健康な対照群より両方とも有意に高く、AgP患者群の血清中の総コレステロールレベルは重度のアタッチメントロス部位のパーセンテージと正の相関を有していたことから、歯周病がAgP患者の血清中脂質と血糖値のレベルに与える影響が示唆されている。

 このことは歯周病が血清中脂質とグルコースのレベルを変化させることを示しているその上、歯周病が糖尿病に対して与える効果は動物実験においても、中等度の実験的歯周病はマウスにおけるインスリン抵抗性とβ細胞の機能障害を去勢と同様に誘導し得ることが実証されており、この両者の組み合わせはインスリン抵抗性(IR)の程度を増悪させるだろう。結論的に言えば、歯周病と糖尿病の相互関係は続々と実証がなされている。
PMID: 17304319

歯科関連には基本的に無知ですので、誤訳が有ればご指摘下さいませ。


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脂肪で活性酸素増が原因----肥満の糖尿病治療に可能性 [糖尿病]

内臓などにたまった脂肪は、体に有害な活性酸素を増加させ、高血圧や糖尿病などを引き起こすことを下村伊一郎・大阪大教授(内分泌代謝学)らが突き止め、米医学誌The Journal of Clinical Investigation(114:1752-1761)に発表した[→無料pdf論文]。

 肥満による病気の原因の一端を解明したもので、マウスの実験で、活性酸素を抑えると糖尿病が改善した。人間での実用化が期待される。
 
 下村教授らは、太らせて糖尿病になったマウスで実験。内臓の脂肪で、活性酸素が増えている一方、活性酸素を消去する酵素が減っていることを確かめた。

 また、脂肪からできるホルモンのバランスが崩れ、動脈硬化を促進するホルモンが増えていることが分かった。

 下村教授らは、活性酸素が増えたことがホルモンバランスの崩れにつながったと推定。活性酸素の発生にかかわる酵素を抑える薬をマウスに投与すると、ホルモンのバランスは元に戻った。糖尿病も改善した。

 下村教授は「活性酸素を抑えれば糖尿病などを治療できる可能性がある」と話している。


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