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北大チームの画期的な研究ーー引退名選手の復帰も可能になる? [先端医療]

ひざ軟骨の自然再生に成功=スポーツ治療に光明----北大グループ(時事通信社 - 11月30日 16:01)

 運動で負荷が掛かり、故障しやすいひざやひじの関節。北海道大大学院の安田和則教授(整形外科)らの研究グループは、不可能とされてきた関節軟骨の自然再生に、ウサギを使った実験で成功したと30日までに発表した。ひざを痛めた中高年層やスポーツ選手のけがの治療に応用できる可能性があるという。論文はドイツの学術専門誌「マクロモレキュラー・バイオサイエンス」電子版に掲載された。

 安田教授によると、2種類のゲル状高分子化合物を北大が開発した独自の手法で組み合わせ、軟骨に分子構造が似た新たなゲル素材を開発。ウサギのひざ関節軟骨の欠損部に埋め込んだところ、4週間で軟骨が再生した。副作用は出ていない。
 
 元記事で言及されているのは、Macromolecular Bioscience (Published Online: 21 Nov 2008)の論文で、タイトルは、"A Novel Double-Network Hydrogel Induces Spontaneous Articular Cartilage Regeneration in vivo in a Large Osteochondral Defect"(新たなダブルネットワーク・ハイドロゲルは、重度の骨軟骨欠損部にインビボで関節軟骨の自然な再生を誘導する)である。


 安田和則先生は、北大医学部で、膝関節外科/スポーツ医学がご専門である。日本を代表する膝関節の専門医であり、米国整形外科スポーツ医学会会員であり、靭帯再建術をすべて関節鏡視下手術でなさることでも知れる通り、日本関節鏡学会の理事もなさっているし、北大病院ではスポーツ医学診療科(火・木)の外来診療をなさっている(なお北大病院の当該医局の医師は日本ハムのチームドクターをしている)。


 先生は、特に膝靭帯損傷の治療に関しては、国際的にも指導的立場にある方である。

ABSTRACT
 We have developed a novel method to induce spontaneous hyaline cartilage regeneration in vivo for a large osteochondral defect by implanting a plug made from a double-network hydrogel composed of poly(2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid) and poly(N,N-dimethylacrylamide) at the bottom of the defect, leaving the cavity vacant. In cells regenerated in the treated defect, type-2 collagen, Aggrican, and SOX9 mRNAs were highly expressed and the regenerated matrix was rich in proteoglycan and type-2 collagen at 4 weeks. This fact gave a significant modification to the commonly established concept that hyaline cartilage tissue cannot regenerate in vivo. This study prompted an innovative strategy in the field of joint surgery to repair an osteochondral defect using an advanced, high-function hydrogel.


[アブストラクト](Catsduke訳)
 我々は、重度な骨軟骨欠損に対して、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とN,N-ジメチルアクリルアミドを組み合わせて作ったダブルネットワーク・ハイドロゲルからなるプラグを欠損部の基底部に埋め込み、インビトロで硝子軟骨の自然再生を誘導する新たな手法を開発した。処置後に再生された細胞内では、II型コラーゲン、アグリカンとSOX9 mRNAが高レベルで発現しており、4週では再生マトリクスはプロテオグリカンとII型コラーゲンが増加していた。この事実は硝子軟骨組織は生体内では再生できないという通念に著しい修正を迫るものである。本研究は関節外科の分野において、高機能なハイドロジェルを用いた骨軟骨欠損の修復に革新的なストラテジーを促した。


 松井選手や清原選手のように、スポーツ選手が膝の軟骨をオペで対症療法的にいじると、普通は再生しないので、絶対に縮小再生産的に機能が落ちて行かざるを得ず、引退を速めるだけの結果に陥りがちである。

 しかし、この研究では、2種類のゲル状高分子化合物を組み合わせた、軟骨に分子構造が似た新素材によって、再生が可能だという画期的な技術が開発されたことになる。
 安田研究室では、上述の二つのゲル網目を組み合わせて、水分を90%以上も含みつつも、従来のゲルの何百倍もの強度を持ち、生体軟骨に匹敵するほどの丈夫さを有する「ダブルネットワークゲル」の発明に成功した訳である。こうしたゲル素材の研究は、生体類似性が高く、低摩擦で、しかも衝撃吸収性にも優れる人工関節の研究にも生かせるものと言える。

 この研究は、論文の共著者を参照すれば分かるとおり、北大大学院の理学研究院・生命科学部門生命理学部門生命融合化学分野・ソフト&ウェットマター研究室の龔 剣萍教授や長田義仁名誉教授(理化学研究所・基幹研究所副所長)との共同研究である。

 上で言及されているSox9遺伝子とは、現在20種以上が同定されているSry-type HMG box遺伝子の一つで、発生過程で主として軟骨組織特異的に発現が認められるものである。ヒトにおけるSox9の遺伝子変異が大腿骨・脛骨の彎曲・角状変形を特徴とする骨系統疾患である彎曲肢異形成症(Campomelic dysplasia)の原因となることが報告されている。
 さらにSox9タンパクは軟骨の代表的な細胞外マトリクスであるII型コラーゲンの遺伝子上の特定の塩基配列に結合し、II型コラーゲン遺伝子の転写活性を増加させることが報告されていて、Sox9は軟骨組織特異的に発現する転写因子として関心が持たれている。
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『WHO西太平洋地域伝統医学国際標準用語集』発行。 [東洋医学]


 2004年より、WHO西太平洋事務局の主催で伝統医学用語の国際標準化作業が精力的に進められてきている。
 WHO西太平洋事務局は、これまで3回に亘り国際会議を招集し、2004年10月北京、2005年6月東京、2005年10月大邱(韓国)でそれぞれ開催してきた。同事務局・尾身 茂局長は、その趣旨についてこう述べている。「伝統医学の適切な使用を促進するため、そのプログラムの主なテーマは“証拠に基づくアプローチによる標準化”である。

 この文脈で、これまで西太平洋地域の伝統医学の標準化作業(例えば用語、鍼灸の経穴の位置、薬物治療、研究、診療、情報交換など)が進められてきている」という。今回の用語集発刊の目的は、1)伝統医学のよりよい理解、教育、トレーニング、実践と研究のための共通の用語体系を提供すること、2)関係国での情報交換を容易にすることがあげられている。

 いっぽうわが国でもこの国際的な動向に対して、意欲的な取り組みがなされてきた。日本東洋サミット会議は、2005年5月、東洋医学に関連する国内6団体(下記)を中心に、伝統医学に関する国の支援体制の確立、WHOの伝統医学に関する各種の標準化作業への参加、伝統医学に関する国際協力などを目的に結成された。当然、WHO西太平洋事務局の伝統医学用語に関する今回の国際標準化作業にも大きな関心を寄せてこられた。

 このたび、その成果としてWHOから、“WHO International Standard Terminologies on Traditional Medicine in the Western Pacific Region”『WHO西太平洋地域伝統医学国際標準用語集』が発行された。

 伝統医学用語約4,000が、それぞれ「コード番号:Code」「英語表記:term」「漢字表記:Chinese」「定義/説明:Definition/Description」の4つから整理されている。なお、中国語は現在の簡体字ではなく、繁体字が用いられ、日本の医書や漢方医も一部日本読みで掲載されているが、生薬名や漢方方剤の収載はみられない。

 従って、その内容は全体としては、必ずしも日本の漢方医学の現状すべてを反映したものとは言えないが、尾身局長は、今後の展開を踏まえ、国際的な第一歩としての意義を強調された。この用語集発行を契機に、日本東洋サミット会議がさらにいっそう西太平洋地域の伝統医学発展のため、国際的に重要な役割を担うことが期待される。

 本書はWHO Regional Office for the Western Pacificの「Publications and documents」コーナーから全文をPDFで閲覧できる。
 http://www.wpro.who.int/publications/docs/WHOIST_26JUNE_FINAL.pdf


 また、書籍の形態での所持をお求めのかたは「Who International Standard Terminologies on Traditional Medicine in the Western Pacific Region」を購入できる。

Who International Standard Terminologies on Traditional Medicine in the Western Pacific Region(paperback)

Who International Standard Terminologies on Traditional Medicine in the Western Pacific Region(Hardcover)

<日本東洋医学サミット会議(JLOM)のメンバー>
 社団法人 全日本鍼灸学会(会長:矢野 忠先生)
 日本生薬学会(会長:正山 征洋先生)
 社団法人 日本東洋医学会(会長:石野 尚吾先生)
 和漢医薬学会(理事長:野村 靖幸先生)
 北里研究所東洋医学総合研究所・WHO伝統医学研究協力センター(センター長:花輪 壽彦先生)
 富山大学医学部和漢診療学講座・WHO伝統医学研究協力センター(センター長:嶋田 豊先生)

【コメント】
 WHO の伝統医療に関する著作を紹介しておきます。

 WHO(R. バンナーマンら)編『世界伝統医学大全』

 アーユルヴェーダやイスラム圏のユナニ医学、鍼灸・ヨーガから、占いと悪魔払いの効用、薬用植物の資源保護、伝統医学の組織的側面など、補完代替医療や伝統医学に興味を持つ方々必携です。

 さらに他の東洋伝統医学(東アジア〜東南アジア〜南アジア)関連の参考書を紹介します。

P.ユアール『アジアの医学―インド・中国の伝統医学』


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第6回 医薬ビジランスセミナー(於・阪大医学部)のご案内 [医療の相対化]

予防の間違い、診断の間違い、治療の間違いが薬害を生む

過剰な「病気キャンペーン」が人々を不安にし、過剰な医療

を生み、医療従事者を疲弊させることにつながるのでは? 





[講演者・パネリスト]
  浜 六郎:NPO法人医薬ビジランスセンター理事長
  山本英彦:大阪赤十字病院小児科 救急部長
  林 敬次:はやし小児科・元 高槻赤十字病院 小児科部長
  谷田憲俊 :山口大学医学部医学科 医療環境学教授

参加申し込み:http://www.npojip.org/applicationforms/6thseminar-application.html

医薬ビジランスセンターHP:http://www.npojip.org/
医薬品・治療研究会HP:http://www.tip.gr.jp/
新薬学研究者技術者集団HP:http://www.d9.dion.ne.jp/~sigma72/

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【馬鹿騒ぎに抗うシリーズ】小児インフルエンザと漢方対処法----ツムラ医家向けメイルマガジンより [東洋医学]

外房こどもクリニック院長:黒木 春郎 先生 に聞く

<臨床研究から、麻黄湯の有用性を確認>
 「麻黄湯にはオセルタミビル(Catsduke注:タミフルのこと)と同等の治療効果があります」と臨床研究の成果を説明されるのは、外房こどもクリニックの黒木春郎先生。2003年から05年にかけて、3回にわたり、小児インフルエンザ(38.0℃以上、発症48時間以内、インフルエンザ抗原迅速診断キット陽性)に対するオセルタミビル単独群(4mg/kg/day、分2、5日間)と麻黄湯(0.1-0.2g/kg、分3、3日間)の併用群を比較検討した。さらに06年に麻黄湯(同)の単独療法を検討する臨床研究を実施された。

 その背景・目的は、抗ウイルス薬が副作用や耐性ウイルスの出現などの課題を抱えている一方、漢方薬はインフルエンザの治療に歴史的な集積を有し、より有効な治療法の確立とその標準化を果たすことが可能と考えられたからだ。

 麻黄湯を選択した根拠は、「インフルエンザへの適応があり、小児によく使用されているからです」(黒木先生)。また、適応となる症状が、発汗傾向が見られない、頭痛、悪寒、関節痛、筋肉痛、四肢倦怠、咳嗽など、インフルエンザの初期症状に類似している点を挙げられている。

 04年1〜3月に小児科外来(齋藤病院)を受診した患児91人を対象に実施した併用療法の検討では、麻黄湯併用群のほうが解熱までの時間が短く、発熱遷延例が少ない傾向が見られた。
 臨床経過は全体としては両群間に有意差はみられなかったが、麻黄湯併用群でやや良好な傾向が見られた。活動性では麻黄湯併用群に良好な傾向がみられた。また、両群を通じて短期合併症、長期予後では特に問題となるものはなかった。さらに両群を通じて有害事象は認められなかった。

 05年2〜3月に小児科外来(同)を受診した患児107人を対象に実施した併用療法の検討では、麻黄湯併用群に解熱までの時間が短い傾向が認められた。臨床症状は全体として両群に有意差は認められなかった。食思、鼻汁、咳、睡眠に関して、麻黄湯併用群で良好な回復の傾向が示された。
 また、ウイルス分離について04〜05年にかけて、265エピソードで施行し、122例は治療開始時と開始後3〜4日目に採取。オセルタミビル単独群、麻黄湯併用群をワクチン接種、未接種群に分けて解析したところ、分離率に有意差は認められなかった。
 
<麻黄湯単独の有効性認める>
 06年3月には外房こどもクリニック外来を受診した患児29例(3ヵ月〜12歳)のうち、質問票を回収できた23例(ワクチン既接種8例)を対象に、麻黄湯単独による治療を考察された。その結果、22例が順調に経過した。1例はワクチン未接種で、発熱、気道症状が遷延した。

 黒木先生は「多くの例で麻黄湯は安全に使用でき、有効であることがわかりました。小児インフルエンザ治療のなかで、麻黄湯の位置づけが明確になったと言えるでしょう。投与量の目安としては、0〜5歳児2.5g/日分3、5〜10歳児5.0g/日分3が標準的です。水分摂取が低下して脱水の見られるような小児には慎重投与すべきですが、これまで特別な有害事象は経験していません」と語る。
 一連の研究から黒木先生は「麻黄湯は安全に投与可能で、オセタミビルとほぼ同様の効果を示したと言えます」と強調された。


図1 麻黄湯単独治療例 2006年 発熱の過程

図2 麻黄湯単独使用例 2006年 [結果:臨床経過]


【追記】
 「漢方医学」32巻2号に掲載された、福富 悌「インフルエンザ感染時の発熱に対する麻黄湯とオセルタミビルの比較」というケースレポートを紹介します(医療関係者は登録してダウンロードできます)。
[抄文]
 臨床上38℃以上の発熱を認め、迅速インフルエンザ診断キットでA型あるいはB型と診断された10歳未満の小児インフルエンザ症例に対し、オセルタミビルと麻黄湯の発熱に対する効果について比較検討した。
 オセルタミビル群(38例)と麻黄湯群(54例)ともに投与2日目以降は体温が有意に低下し、両群間に有意差は認めなかった。麻黄湯は飲みにくいとする意見があるものの、小児インフルエンザ感染の治療において、副作用もなく効果的であり,脳症予防の点からも小児においては有用な治療と考えられた。
 http://www.tsumura.co.jp/password/k_square/journal/kampoigaku/vol32_no2/05_case01.pdf

 この検討では,麻黄湯のインフルエンザによる発熱に対する効果はタミフルと同等でした。抗ウィルス効果の故ではなく、タミフルは中枢に作用して解熱するという機序であり、ウィルス疾患が治ったが故に体温のセットポイントを人体が下げるという免疫システム上の構造に乗っ取った麻黄湯での解熱とは全く似て非なるものであり、いずれが本質的に有効であり、医薬品として優れているかは論を俟たないでしょう。

 さらに麻黄湯の効果について著者らの経験では、インフルエンザによる全身倦怠感や頭痛や筋肉痛に対する効果は、オセルタミビルより有効でした67)。また、他の報告では、発熱についてはアマンタジンと同等であるとしたものや8)、24時間以内に麻黄湯を投与した場合、オセルタミビルと同等の解熱効果があった報告9)、A型インフルエンザにおいて、オセルタミビル単独群に比べ、麻黄湯単独群/併用群で発熱時間が有意に短縮されたなどの報告、オセルタミビル単独群とオセルタミビルと麻黄湯併用群との比較で、発熱時間に有意差がなかった報告や、オセルタミビルとの併用で西洋薬より麻黄湯を併用したほうが発熱時間は短く、経過も良好であった報告などがあります1011)。

6)福富 悌,名田匡利,青木雄介,他:麻黄湯のインフルエンザの合併症に対する効果の検討.漢方と免疫・アレルギー20:44-53,2006
7)福富 悌,岩越浩子,折居忠夫,他:インフルエンザの症状軽減に有効であった麻黄湯の使用経験.漢方医学29:228-230,2005
8)安部勝利:風邪症候群(夏風邪,インフルエンザ)に対して,西洋薬治療と比較した漢方.日本小児東洋医学会誌19:46-52,2003
9)窪 智宏:インフルエンザ感染症に対する,麻黄湯の効果-成人例での検討-.漢方と免疫・アレルギー20:54-61,2006
10)木元博史:インフルエンザに対するリン酸オセルタミビルと麻黄湯の併用効果比較-成人例での西洋薬併用との効果比較-.漢方医学29:166-169,2005
11)黒木春郎:インフルエンザと漢方. 漢方と免疫・アレルギー20:32-43,2006
12)福富 悌,深尾敏幸,金子英雄,他:10歳未満の小児インフルエンザ治療における麻黄湯の効果についての検討.漢方と免疫・アレルギー21:10-20,2007
 

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【馬鹿騒ぎに抗うシリーズ】インフルエンザと漢方対処法----ツムラ医家向けメールマガジンより [東洋医学]

あきば伝統医学クリニック院長・秋葉 哲生 先生に聞く

<インフルエンザ初期症状に麻黄湯>
漢方はインフルエンザに昔から対応していました。その歴史は約2000年前に遡ります」と説かれるのは、あきば伝統医学クリニック院長の秋葉哲生先生。初期のインフルエンザであれば、柴胡桂枝湯、麻黄湯、桂枝湯、五積散、香蘇散、麻黄附子細辛湯の単独使用で、1〜3日の経過観察で十分可能としている。

 抗菌剤は3日以降に膿性喀痰などを伴う場合に用いる。また、解熱鎮痛剤は通常不要だが、使用する場合は頓用とする。上記の方剤は、鎮咳作用や去痰作用が期待できるため、通常は鎮咳剤や去痰剤は使わない。

 秋葉先生は特にインフルエンザの初期症状に対し、麻黄湯を勧める。この方剤は「脈がしっかりしていて、頭痛、発熱、関節痛、悪寒症状が強く、歩いて来院されてきた方に用います」(秋葉先生)。また、麻黄湯など漢方薬は「抗ヒスタミン作用がなく、仕事に行っても眠くならないのが利点です」(同)と強調。

 麻黄湯は2・3日使用し、その間、十分な水分補給と発汗を促すようにするのが早期回復のポイントだ。用量としては、成人7.5g/日分3、小学生5.0g/日分3、3歳児未満2.5g/日分3が目安である。病後の衰弱期、著しく胃腸虚弱な人、食欲不振、悪心、嘔吐のある患者さんには慎重投与が必要である。

 その後、倦怠感や微熱、食欲不振などの症状がある場合、小柴胡湯や柴胡桂枝湯を4、5日用いる。これらの漢方薬には「衰弱した体を回復させる効果があります」(同)。

 熱が下がって、乾いた咳や、気管支炎が残った場合は、麦門冬湯を使用する。感冒の諸症状が見られなくなり、倦怠感や食欲不振の症状がある時は、補中益気湯を使う。
 

<体力の弱い高齢者に香蘇散、麻黄附子細辛湯>
 体力の弱い高齢者には、香蘇散を用いる。「他の西洋薬や漢方薬が使いづらい胃腸虚弱にも適しています」(同)。このほか、高齢者に適した漢方薬に、麻黄附子細辛湯、柴胡桂枝湯がある。麻黄附子細辛湯は原則として冷えや悪寒があり、咽頭痛などを伴う症状に用いる。またアレルギー性鼻炎にも応用される。

 秋葉先生は「高齢者には香蘇散か麻黄附子細辛湯を用いますが、虚弱で熱の上がり方が顕著でない場合は香蘇散が適しています」と話す。

 インフルエンザがこじれた時は、小柴胡湯を使う。この方剤は感冒の症状が5日以上長引き、食欲も低下、咳や痰を伴う場合に適している。
 高齢者でややこじれた時に向いている方剤に、参蘇飲、竹茹温胆湯がある。

 秋葉先生は「1918年に世界的に猛威を振るったインフルエンザのスペイン風邪に対し、西洋薬はあまり対処できませんでしたしかし、当時の漢方名医である森 道伯先生は漢方を処方し、漢方の有用性を示した記録が残っています」と語られた。

 また、漢方によるインフルエンザ治療は医療費が少なくて済むのもメリット。「漢方治療は短期間で結果が出るため、処方日数が短く医療経済的に優れています」(同)とアピールされた。

 麻黄湯をはじめとした漢方治療が、インフルエンザ急性期にも、また遷延期(慢性期)にも有用であることが、お二人の臨床医から直接うかがうことができた。なお、一般に漢方製剤の小児用量は規定されていないが、ハルナック換算表を参考とした以下の量が目安とされている(「一般用漢方処方の手引き」)。

・15才未満7才以上 成人用量の2/3
・7才未満4才以上 成人用量の1/2
・4才未満2才以上 成人用量の1/3
・2才未満      成人用量の1/4以下

*また体重換算では、成人1日量が7.5gの場合、0.15g/kgが目安となります(成人体重を50kgと仮定した場合)。

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ヒト睾丸由来の生殖幹細胞から新たな万能細胞を作成 [先端医療]

成人男性の精子幹細胞から万能細胞作成----再生医療へ応用期待(時事通信社 - 08年10月09日)

 成人男性から精子のもとの幹細胞を採取して特殊な方法で培養し、増殖能力が高く、身体のあらゆる細胞に分化する胚性幹細胞(ES細胞)によく似た万能細胞(多能性幹細胞)を生み出したと、ドイツのテュービンゲン大などの研究チームが9日、英科学誌ネイチャーの電子版に発表した。

 精子幹細胞からの多能性幹細胞作成は、2004年12月に京都大大学院医学系研究科の篠原隆司教授らが新生児マウスで初めて成功し、「多能性生殖幹(mGS)細胞」と名付けたと発表。4年足らずでヒトでも実現した。将来、男性難病患者の再生医療への応用が期待される。 
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 元記事で言及されているのは、論文"Generation of pluripotent stem cells from adult human testis"(成人ヒト睾丸からの多能性幹細胞の産生)の事で、Nature(Published online 8 October 2008)に掲載された、独・チュービンゲン大・実験発生学部・解剖学研究所のSabine Conrad博士らの研究である。

Abstract
 Human primordial germ cells and mouse neonatal and adult germline stem cells are pluripotent and show similar properties to embryonic stem cells. Here we report the successful establishment of human adult germline stem cells derived from spermatogonial cells of adult human testis. Cellular and molecular characterization of these cells revealed many similarities to human embryonic stem cells, and the germline stem cells produced teratomas after transplantation into immunodeficient mice. The human adult germline stem cells differentiated into various types of somatic cells of all three germ layers when grown under conditions used to induce the differentiation of human embryonic stem cells. We conclude that the generation of human adult germline stem cells from testicular biopsies may provide simple and non-controversial access to individual cell-based therapy without the ethical and immunological problems associated with human embryonic stem cells.


アブストラクト[Catsduke訳]
 ヒト始原生殖細胞とマウスの新生児期および成体生殖幹細胞は多能性を有し、ES細胞と相似した諸特徴を有する。ここに我々は成人ヒト精巣の精原細胞由来のヒト成体生殖幹細胞の樹立に成功した事を報告する。これらの細胞の細胞および分子キャラクタリゼーションはヒトES細胞との多くの類似点を明らかにし、生殖幹細胞は免疫不全マウスへの移植後にテラトーマを産生した。ヒト成体生殖幹細胞は、ヒトES細胞の分化誘導に使われたものと同状況下では、三胚葉全ての様々なタイプの体細胞に分化した。我々は精巣バイオプシーから得たヒト成体生殖幹細胞の産生は、ヒトES細胞に伴う倫理的・免疫学的諸問題のない細胞療法に、単純かつ問題の生じない手段を提供する可能性があるという結論に達した。

【コメント】
 日本では、京大の篠原隆司教授の研究チーム(京大ほか、東京医科歯科大学、理研バイオリソースセンター、鳥取大生命科学研究科との共同研究)がマウスの精巣から、ES細胞とほぼ同様の機能を持つ、この多能性幹細胞の樹立に既に成功している。
 なお篠原先生は、京大医学部を経て大学院修了後、平成11年ペンシルバニア大・獣医学部リサーチフェロー。翌年、京大院医学研究科の分子生体統御学講座分子生物学・助手、平成15年に先端領域融合医学研究機構・特任助教授を経て、翌年に遺伝医学講座分子遺伝学分野教授となり、現在に至る。


 元記事の研究は、これをヒトにおいて行ったものであり、成功するのは単に時間の問題であった。先鞭をつけたのは先生方の研究である。

 生殖系列細胞は多能性の細胞を生じる能力を持ち、胎生期の内部細胞塊からはES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)、始原生殖細胞からはEG細胞(embryonic germ cell:胚性生殖細胞)と呼ばれる多能性幹細胞を作ることができる。ただし、生殖細胞の多能性細胞の形成能力は胎生中期に失われ、生後の生殖細胞には多能性はないと考えられていた。

 文字通り、精子形成の源になる細胞が精子幹細胞であるが、2003年に篠原先生のグループはこの精子幹細胞の長期培養法を、論文"Long-Term Proliferation in Culture and Germline Transmission of Mouse Male Germline Stem Cells"で報告している。 (Biology of Reproduction 69:612-616)。

Abstract
 Spermatogenesis is a complex process that originates in a small population of spermatogonial stem cells. Here we report the in vitro culture of spermatogonial stem cells that proliferate for long periods of time. In the presence of glial cell line-derived neurotrophic factor, epidermal growth factor, basic fibroblast growth factor, and leukemia inhibitory factor, gonocytes isolated from neonatal mouse testis proliferated over a 5-month period and restored fertility to congenitally infertile recipient mice following transplantation into seminiferous tubules. Long-term spermatogonial stem cell culture will be useful for studying spermatogenesis mechanism and has important implications for developing new technology in transgenesis or medicine.


アブストラクト(Catsduke訳)
 精子形成は精原幹細胞の小集団において起こる複雑なプロセスである。ここに我々は、長期間増殖可能な精原幹細胞の生体外培養法を報告する。グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)と上皮細胞増殖因子(EGF)と塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と白血病抑制因子(LIF)の存在下で、新生児マウスの精巣からの始原生殖細胞は5ヶ月間にわたり増殖し、精細管への移植後に先天的不妊のレシピエントマウスの受精能が回復した。長期間の精原幹細胞の培養は、精子形成のメカニズムの研究に有用であろうし、遺伝子組換えや医学における新たなテクノロジーの開発に対する重要な意味を有することになろう。

 篠原先生がたのこの精子幹細胞の長期培養法では、上のアブストラクトにもあるように、新生児マウスの精巣細胞をGDNF・LIF・EGF・bFGFの存在下で培養すると、培養生殖細胞はES細胞とは別形態のコロニーを生じ、精子幹細胞の対数増殖を誘導する。培養された精子幹細胞は不妊マウスの精巣内に移植すると精子を作り、雌との交配によって正常な子孫を産む。この性質に因み、培養された精子幹細胞はGermline Stem Cell=「GS細胞」と命名された。

 篠原先生がたは次のステップとして、このGS細胞を用いた遺伝子改変マウス作成を試みた。その過程で、2004年にGS細胞にまじってES細胞と同様な形態を持つコロニーが出現することを発見し、Cellに発表した論文"Generation of plluripotent stem cells from neonatal mouse testis(新生児マウス睾丸からの多能性幹細胞の産生)"では、この細胞がES細胞とほぼ同様な性質を持つ細胞であることを報告された(Cell 119:1001-12)。唯一ES細胞と異なる点はDNAのメチル化のパターンで、ES細胞は体細胞型であるのに対して、この精巣由来ES様細胞は精子に近いものであったことである。ES/EG細胞は胎児組織から樹立されるが、このMultipotent Germline Stem Cell=「mGS細胞」は生後の生殖細胞からも同等の性質を持つ細胞が得られることを示している。


Abstract
 Although germline cells can form multipotential embryonic stem (ES)/embryonic germ (EG) cells, these cells can be derived only from embryonic tissues, and such multipotent cells have not been available from neonatal gonads. Here we report the successful establishment of ES-like cells from neonatal mouse testis. These ES-like cells were phenotypically similar to ES/EG cells except in their genomic imprinting pattern. They differentiated into various types of somatic cells in vitro under conditions used to induce the differentiation of ES cells and produced teratomas after inoculation into mice. Furthermore, these ES-like cells formed germline chimeras when injected into blastocysts. Thus, the capacity to form multipotent cells persists in neonatal testis.The ability to derive multipotential stem cells from the neonatal testis has important implications for germ cell biology and opens the possibility of using these cells for biotechnology and medicine.


[アブストラクト:Catsduke訳]
 生殖系列細胞は、多分化能のES細胞/EG細胞を形成できるが、これらの細胞は胚性組織からしか得られず、こうした多能性細胞は新生児の生殖腺からは得られなかった。ここに我々は新生児マウス睾丸由来のES様細胞確立に成功した事を報告する。これらES様細胞は、そのゲノム刷り込みのパターンにおいて以外は、表現型的にES/EG細胞によく似ている。これらは、ES細胞の分化誘導に用いられる条件下で、様々なタイプの体細胞に生体外で分化し、マウスへの移植後にテラトーマを産生した。その上、これらES様細胞は胚盤胞に注入した時に異生殖系列キメラを形成した。それ故、多能性細胞形成の可能性は、新生児の睾丸内に存在している。新生児睾丸由来の多能性幹細胞の持つ能力は、生殖細胞生物学に重要な意味を持つし、これらの細胞の使用はバイオテクノロジーと医学に多くの可能性を開いている。

 本研究では、以前の精子幹細胞の培養条件下で新生児マウスの精巣を培養すると、約20%の頻度でES細胞様形態を持つ細胞が出現することが発見された。この細胞はES細胞と同様な分子マーカーを発現しており、筋肉・血液・神経などの種々の体細胞を産生し、胚盤胞内への移植で生殖細胞を形成し、当該細胞由来の子孫も作成可能になった。この発見で、今後は精子幹細胞を用いた再生医療・バイオテクノロジーの研究が飛躍的に進むと考えられる。

 ES細胞の樹立には受精卵=胎児を犠牲にしなければならず、倫理的問題が生じている。しかし、個体の生命を犠牲にせずに同様な機能を持つ細胞を樹立可能なことが示され、ES細胞を用いた再生医療の持つ問題点を解決する一つの方向性を示すとは言える。核移植を使わずとも自己の精巣組織から免疫学的拒絶反応がない多能性細胞が取れるのも利点である。しかし、バラ色の技術と呼ぶだけでなく、以下の問題点は存するのではないか。

1.自己の精巣組織から拒絶反応がない多能性細胞を取り、治療に使えるのは、所詮は先進国の一部の金持ちに過ぎない。来世紀にでもならない限りは、これが国民皆が受けられるような安価で一般的な治療法になるとは思えない。即ち、臓器移植のドナーとレシピエントの非対称性と全く同じ問題を有する。

2.mGS細胞は生殖細胞を形成する能力も持つので、mGS細胞のゲノム操作を行うことで、新しい個体遺伝子改変法の開発を促すと考えられるが、それもまた、数回も心臓移植をしているようなアラブの金持ちのような一部の経済的選良にのみ許される遺伝子操作に繋がらないのかという疑問は残る。


【ES・iPS細胞参考書】
山中伸弥 編『実験医学増刊 Vol. 26-5』(再生医療へ進む最先端の幹細胞研究―注目のiPS・ES・間葉系幹細胞などの分化・誘導の基礎と各種疾患への臨床応用)



山中伸弥『iPS細胞ができた!―ひろがる人類の夢』


須田年生『幹細胞の基礎からわかるヒトES細胞』


【生命倫理・参考書】
人間改造論―生命操作は幸福をもたらすのか?


◆「人間改造」のどこが問題か?◆(出版社HPより)
 クローン羊、人工授精、臓器移植、ヒトゲノムの解読など、生命科学や医療技術の進展にはめざましいものがあります。このままいけば、遺伝子操作によって「永遠の生命」を手に入れるのも夢でないかもしれません。しかし、そこに落とし穴、危険性はないでしょうか。ヒト・クローンにおいてアイデンティティはどうなるのでしょうか。人間の生活・生命の根拠そのものが危機に瀕しては元も子もないはずですが。
 著者たちは「人間改造」や「生命操作」やエンハンスメント(増進的介入)はどこまで許容できるのか。許容できないとすればどこに問題があるのか、歯止めをかける根拠は?など、これらの問題の現状を丹念に調査したうえで問題点を拾い上げ、ひろく議論を提供しようとします。執筆者は鎌田東二・上田紀行・粟屋 剛・加藤眞三・八木久美子の諸氏。

◆目 次◆
 生命倫理の文明論的展望(町田宗鳳)
 クローンと不老不死(鎌田東二)
 エンハンスメントに関する小論(栗屋 剛)
 心のエンハンスメント(上田紀行)
 肥満社会とエンハンスメント願望のもたらす悲劇(加藤真三)
 人口生殖は神の業への介入か?(八木久美子)
 先端科学技術による人間の手段化をとどめられるか?(島薗 進)

池田清彦『脳死臓器移植は正しいか』(角川ソフィア文庫)

 臓器移植、人工臓器、遺伝子治療……医療技術の進歩は、さまざまな病気の治療を可能にした。なかでも脳死臓器移植技術の進歩は著しいが、一方で、この技術は、死生観の再検討を迫っている。脳死は人の死か。そもそも人の死とは何か。脳死後、臓器摘出中に動いたり、脳死状態で数十年も生き続けたりする人を前に「死」をどう捉えればよいのか。脳死臓器移植の問題点に、構造主義生物学者でリバータリアンである筆者が真正面からぶつかり、歴史・医療技術・経済の見地から私たちに鋭く問いかける。 生命倫理の新たな基本文献とも言える書籍。
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大腸癌の抑制遺伝子を発見=シンガポール国立大チーム [先端医療]

(時事通信社 - 09月09日 02:11)シンガポール国立大学(NUS)医学部腫瘍学研究所(所長・伊藤嘉明教授)は8日、「RUNX3」と呼ばれる遺伝子が、大腸がんの発生を抑える抑制遺伝子として機能していることを発見したと発表した。


【コメント】
 伊藤教授は、東北大医学部ご出身で、のち米デューク大学と英インペリアル癌研(ICRF)でポスドク、ICRFのスタッフとなった後、ポリオーマウイルスのミドルT抗原を発見。米NIHの細胞形質転換セクションの主任を務めた後,米NCIを経て、84年-02年3月まで京大医学部教授。在任中の84年に、RUNX3が胃癌の主要な腫瘍抑制因子であることを発見し、癌研究の新たなフロンティアとしてのRUNX遺伝子ファミリーの確立に寄与。95年-01年京大ウイルス研所長を兼任。02年4月よりシンガポール国立分子細胞生物学研究所(IMCB)主任研究員・教授、05年よりシンガポール国立大(NUS)腫瘍学研究所(ORI)所長を兼任されている(参考:ORIのプロフィール&研究領域紹介)。

 ちなみに昨年からは、シンガポール国立大では、先生ご出身の東北大医学部との間でジョイント・シンポジウムも開かれている。東北大からは菅村和夫教授が参加されたし、逆に伊藤教授が、この9月1日開催の「東北大学グローバルCOE・Network Medicine 創生拠点キックオフシンポジウム」に参加され、「Tumor Suppressor RUNX3 : A novel gatekeeper of colon carcinogenesis」(腫瘍抑制因子RUNX3 : 結腸癌発生の新たな門番)という講演をなさっている。

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胸腺内でのヘルパーT細胞への分化メカニズムを解明 [先端医療]

免疫T細胞の作り分けを解明=エイズやがんの新治療法期待−理研(時事通信社 - 09月08日 11:01)

 体内への病原体の侵入やがん細胞の発生を他の免疫細胞に知らせる司令塔役の「ヘルパーT細胞」と、直接攻撃する「キラーT細胞」を作り分ける遺伝子の詳細な働きを、理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターが解明し、米科学誌ネイチャー・イムノロジー電子版に8日発表した。この遺伝子を人為的に制御できれば、エイズやがんなどの新治療法につながると期待される。

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脂肪燃焼遺伝子が糖尿病悪化に関与する [糖尿病]

 瑞・カロリンスカ研究所のJuleen R. Zierath教授らはフィンランド・中国・日本・米国の研究者らとともに、糖尿病患者のインスリン抵抗性に関する新たな細胞機序についての論文"Downregulation of Diacylglycerol Kinase Delta Contributes to Hyperglycemia-Induced Insulin Resistance"(ジアシルグリセロールキナーゼδの発現低下は高血糖誘発性インスリン抵抗性に寄与する)をCell(132: 375-386)に発表した。

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iPS細胞を10難病患者の細胞から作成…ハーバード大 [先端医療]

 パーキンソン病など10種類の遺伝性疾患を持つ患者の細胞から、さまざまな細胞や組織になる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ることに、米ハーバード大などの研究チームが成功し、22日付の米科学誌セルに発表する。発症の仕組みの解明や新薬開発に役立つと期待される。
 研究チームは、筋ジストロフィーやダウン症、1型糖尿病など、抜本的な治療法がない10種類の疾患を持つ、生後1カ月〜57歳の患者から皮膚や骨髄の細胞の提供を受けた。iPS細胞を開発した京都大チームと同じ4種類の遺伝子、またはがん発生にかかわる遺伝子を除く3種類の遺伝子を導入し、いずれも作成に成功した。
 研究チームは今春、10種類の疾患のうち、遺伝子異常によって重度の高尿酸血症などを起こす「レッシュ・ナイハン症候群」について、患者の皮膚細胞からiPS細胞作りに成功したことを、毎日新聞の取材に明らかにしていた。
 ハーバード大などの別の研究チームは先月、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者からiPS細胞を作ったと発表しており、難病患者の細胞を使った研究が急速に進展している。【毎日新聞 08月11日 12:11関東晋慈】

【コメント】
 このチームには島村明子・ワシントン大医学部小児科助教授(血液学/腫瘍学)が参加されているが、先生はシアトル小児病院、フレッド・ハッチンソン癌研究センターのFacultyでもいらっしゃる。
 先生は、ロチェスター大医学部・ジョンズホプキンス大医学部を経て、同大でResidency、ボストン小児病院Fellowshipを経て、現職である。

 骨髄不全がご専門だが、このように海外で、寝食を惜しんで世界水準の研究と診療とに活躍される本物の医師を見ると感激する(力量の無さ故に救急や小児科や産婦人科診療から逃げ回っている連中とは雲泥の差だ)。

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膀胱がん発生率がブロッコリー・スプラウトのエキスで半減 [フィトケミカル]

 米・ロズウェルパークがん研究所のYuesheng Zhang教授(腫瘍学)らは、凍結乾燥したブロッコリーの新芽の濃縮エキスを投与したラットで、膀胱癌発生率が50%以上抑制されたと論文"Inhibition of Urinary Bladder Carcinogenesis by Broccoli Sprouts" Cancer Research(2008; 68: 1593-1600)に発表した。

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糖尿病基礎研究に革命を起こす新手法 [糖尿病]

 瑞・カロリンスカ研究所Rolf Luft糖尿病・内分泌学研究センターのPer-Olof Berggren教授は、米・マイアミ大学と共同で、従来in vivoでは不可能だった膵島細胞におけるインスリン分泌という複雑な細胞過程を研究する方法を開発し、レポート"Noninvasive in vivo imaging of pancreatic islet cell biology"(膵島細胞の生物学的状態の非侵襲的in vivo画像化)をNature Medicine(2008; 14: 574-578)に発表した。


Abstract
Advanced imaging techniques have become a valuable tool in the study of complex biological processes at the cellular level in biomedical research. Here, we introduce a new technical platform for noninvasive in vivo fluorescence imaging of pancreatic islets using the anterior chamber of the eye as a natural body window. Islets transplanted into the mouse eye engrafted on the iris, became vascularized, retained cellular composition, responded to stimulation and reverted diabetes. Laser-scanning microscopy allowed repetitive in vivo imaging of islet vascularization, beta cell function and death at cellular resolution. Our results thus establish the basis for noninvasive in vivo investigations of complex cellular processes, like beta cell stimulus-response coupling, which can be performed longitudinally under both physiological and pathological conditions.

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インスリン抵抗性の発生機序---代謝性交通渋滞が原因 [糖尿病]

 米・デューク大学Sarah W. Stedman栄養・代謝センター内科学のDeborah Muoio助教授らは、II型糖尿病の発症に先行して起こるインスリン抵抗性は、ブドウ糖と脂肪をエネルギー源に切り替える生体の能力をブロックする"metabolic traffic jam(代謝性交通渋滞)"が原因であるとする知見をCell Metabolism(2008; 7: 45-56)に発表した。


 論文は"Mitochondrial Overload and Incomplete Fatty Acid Oxidation Contribute to Skeletal Muscle Insulin Resistance"(ミトコンドリアの過負荷と不完全な脂肪酸酸化が骨格筋のインスリン抵抗性に寄与する)というタイトルである。
Abstract
 Previous studies have suggested that insulin resistance develops secondary to diminished fat oxidation and resultant accumulation of cytosolic lipid molecules that impair insulin signaling. Contrary to this model, the present study used targeted metabolomics to find that obesity-related insulin resistance in skeletal muscle is characterized by excessive β-oxidation, impaired switching to carbohydrate substrate during the fasted-to-fed transition, and coincident depletion of organic acid intermediates of the tricarboxylic acid cycle. In cultured myotubes, lipid-induced insulin resistance was prevented by manipulations that restrict fatty acid uptake into mitochondria. These results were recapitulated in mice lacking malonyl-CoA decarboxylase (MCD), an enzyme that promotes mitochondrial β-oxidation by relieving malonyl-CoA-mediated inhibition of carnitine palmitoyltransferase 1. Thus, mcd−/− mice exhibit reduced rates of fat catabolism and resist diet-induced glucose intolerance despite high intramuscular levels of long-chain acyl-CoAs. These findings reveal a strong connection between skeletal muscle insulin resistance and lipid-induced mitochondrial stress.


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オリーブが発がんを抑制 [フィトケミカル]

<選択性が高く毒性低い>
 マスリン酸(maslinic acid)はオリーブの果肉から抽出されるが、オリーブの葉と樹液にも含まれる化合物で、がん予防に加えて発がん過程におけるアポトーシスを制御する作用がある。

 バルセロナ大・薬学部(生理学)のM. Emília Juanらは、論文"Antiproliferative and apoptosis-inducing effects of maslinic and oleanolic acids, two pentacyclic triterpenes from olives, on HT-29 colon cancer cells"(オリーブ由来の2つの五員環トリテルペン、マスリン酸とオレアノール酸の持つHT-29結腸がん細胞に対する抗増殖性およびアポトーシス誘導効果)をBritish Journal of Nutrition(2008;100:36-43)に発表している。


 この研究は、オリーブ果実エキス(マスリン酸:オレアノール酸=3:1)の効果を調べた、2006年の研究"Olive fruit extracts inhibit proliferation and induce apoptosis in HT-29 human colon cancer cells."[Journal of Nutrition(136:2553-7)]を受けて、これら成分単体が持つ増殖・ネクローシス・アポトーシスの諸効果をHT-29結腸がん細胞を使って蛍光法で調べたものである。 

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愛猫タマの糖尿病併発性貧血その後(090222現在の近況を付加更新)。 [獣医学]

 070607付『II型糖尿病患者の多くでHb値が低下』という記事(http://blog.so-net.ne.jp/orthomolecular/2007-06-07)のコメントとして、うちのタマの貧血について記しました。

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           医療用医薬品が買える! 三牧ファミリー薬局

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