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抗酸化サプリのα-リポ酸は、ネコには禁忌? [獣医学]

 コンビニで販売されているDHC社のサプリメントなどで、我が国でも入手しやすくなったα-リポ酸(チオクト酸。1,2-ジチオラン-3-吉草酸)ですが、人間の場合は、糖尿病の神経障害にも効果があるとされており、欧州では医薬品扱いもされている抗酸化サプリメントです。

 しかしネコに対しては人間/イヌ/ラットの10倍も毒性が強いと、カリフォルニア大デービス校・分子生物科学学部(臨床科学)のHill・Rogers両氏と獣医学部のWerner・O'Neill・Christopherの三氏(病理学・微生物学・免疫学)による共同研究として Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition(Volume 88 Issue 3-4 Page 150)で報告がありました。



 論文「Lipoic acid is 10 times more toxic in cats than reported in humans, dogs or rats」の以下はアブストラクトです(Catsduke翻訳)

「抗酸化剤のリポ酸(LA)は、人間やペットに投与されている。我々は、ネコに対するリポ酸の急性毒性と最大耐用量(MTD)をここに述べる。60mg/kg(高用量群)・30mg/kg(低用量群)・0mg/kg(対照群)で、10匹の健康なオス成猫はリポ酸を経口服用した。胆汁酸・アンモニア・アミノ酸およびジヒドロリポ酸(DHLA) の血清中の酵素活性および濃度が測定され、組織は光顕的に精査された。アンモニアとアミノ酸の濃度変化に伴う重要な臨床上の毒性が高用量投与したネコに見られた。リポ酸の経口摂取は肝細胞毒性を呈し、ネコの最大耐用量は30 mg/kg以下である」

 大阪市大医学部(生化学・分子病態学教室)教授の井上正康先生がご翻訳の『アンチオキシダント・ミラクル』などでも「抗酸化カクテル」として、α-リポ酸を諸々の抗酸化ビタミン等と組み合わせた諸病態に対する処方が紹介されていますが、この件からも一般の方が、詳しく調べないで、そういったレシピをネコに単純に適用してはいけないことが判ります。
 ネット上には、熱心な飼い主さんであることは判りますが、イヌやネコに対して安易なサプリメンテーションが行われているケースが散見されます。

 動物に対するサプリメンテーションを一般人向けに詳説した先駆けは、L.Paulingが監修した『The Healthy Cat Book』(未邦訳)であり、FUSを元とするネコの諸疾患に対するビタミンC療法の書籍ですが、内容に大きな間違いはないのでしょうが、いかんせん古すぎます。また代替医療系の獣医学書のいくつかは翻訳されてきていますが、分子医学や免疫学を基礎にしない、非証明医療系のものには、その内容に問題のあるものも多く、CatsdukeもAmazonなどで疑義を表したものもあります(ホメオパシーやバッチ花療法など。これらはプラセボ対照二重盲検RCTで有効とされたものは皆無であって残念ながらほぼ無効です)。

 ビタミンEををはじめとする抗酸化ビタミンやミネラルやアミノ酸に関する分子医学的知見は進展し、様々な病態における酸化ストレスの広範で深い関わりが知られてくるにつけ、幅広い知識が必要になってきます。人間の医師同様、獣医師も基礎系や救急系の外科系の先生方は別ですが、一般の臨床医師は知識が少ない方が多いので、応用も難しいと思います。また、ネコという種差がもたらす、今回のα-リポ酸のような問題も出てきます。

 サプリメンテーションは飼い主の自己責任での治療となりますが、よかれと思って行ったサプリメントの投与が逆効果をも生み、取り返しの付かないことも起こりえます。従って、医療関係者などで情報を入手分析できるなど相当の研究が必要になりますし、また自ら行っているサプリメンテーションに対して医師に説明できる能力が必要です。最低でもNutrient Requirements of Dogs and Catsとか、Merck Veterinary ManualのToxicology程度はご覧になっているとかが前提かと思います。


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