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熊胆が網膜変性疾患に有効ーー2種類のモデルマウスで確認

 米・エモリー大学眼センター(ジョージア州)のJeffrey Boatright博士らは、アジアで3,000年以上にわたり視覚障害治療に用いられてきた動物性の生薬ユウタン(熊胆)の合成薬が、加齢黄斑変性(AMD)、色素性網膜炎(RP)、緑内障の治療に役立つ可能性があることをマウスを用いた動物実感で明らかにし、Molecular Vision(2006; 12: 1706-1714)に発表した。

 同博士らによると、ユウタンの主要成分であるタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)の合成剤を体系的に投与するとアポトーシスが阻害され、2種類のヒトの網膜変性モデルマウスにおいて網膜光受容体細胞の機能と構造が保護されたという。

 東洋医学では熊の胆嚢内のユウタン液は「苦い冷たい薬」(Catsduke注:これは直訳による誤訳。中医学では味は苦・性は寒)と呼ばれ、肝臓を解毒し、腎石や胆石を溶解し、痙攣を緩和して視力を改善するのに用いられている。

 西洋科学による証拠もユウタンの合成製剤が医学上有効であることを示している。同博士らは、今回の研究はユウタンの成分の眼への有効性を示す最初の比較対照実験による証明であるとしている。検査した化合物はクマから得られたものではなく合成されたもので、比較的安価である。

 これらの結果が眼科医に重要であることは、難治性の失明の多くのパターンがアポトーシスによる神経変性が原因だからである。


 さらに、この合成製剤は高価でなく、ヒトでも耐容性が高かった。現在、同製剤は米食品医薬品局(FDA)・英国医薬品庁(MHRA)などの多くの国の薬事当局から承認されている。

 同博士らは、今回の2種類の全く異なる動物モデルを用いた実験結果により、今後、臨床試験が行われるだけでなく、AMD、RP、緑内障、失明の原因となるアポトーシス関連の他の疾患を治療する際に実際に使用されるようになることを希望している。

 今回の研究には、アトランタ復員軍人局医療センター、ミネソタ大学、葡・リスボン大学が参加した[MT誌07年3月8日 (VOL.40 NO.10) p.48]。

【コメント】
 タウロウルソデオキシコール酸の遊離型であるウルソデオキシコール酸は、日本でもすでに西洋医学の医薬品として用いられています。「ウルソ」という商品名(三菱東京製薬)を代表に肝・胆・消化機能改善剤(胆道系疾患及び胆汁うっ滞を伴う肝疾患・慢性肝疾患における肝機能改善・高トリグリセリド血症・小腸切除後遺症や炎症性小腸疾患における消化不良・外殻石灰化を認めないコレステロール系胆石の溶解・原発性胆汁性肝硬変における肝機能の改善)として、人間のみならず、獣医領域でさえ頻用されています。

 しかし、厚労省の「医薬品等安全性情報No.162」で2000年9月、副作用として間質性肺炎が指摘されています。
>間質性肺炎:発熱・咳嗽・呼吸困難・胸部X線異常を伴う間質性肺炎があらわれる
>ことがあるので、このような症状があらわれた場合には、投与を中止し、副腎皮質
>ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。

 生物由来(現在は合成されていますが、認識は動物性生薬のようなものでしょう)の漢方成分だから安全だろうと、他の合併症用の薬品と安易に抱き合わせで頻用すれば、中国では肝疾患の5%程度にしか用いられない(証に合わせるからです)小柴胡湯が、日本では30%以上の肝疾患に頻用され、しかも他薬と混用され、インターフェロンとの併用例で間質性肺炎による死亡例を出したのと同様、たとえ漢方的には単味であるにせよ、新たな副作用が報告されるような事態も起きるかもしれません。

 しかし、眼に良いということは、東洋医学領域では夙に知られています。
 例えば、HP「漢方専門薬局薬剤師の憂鬱」http://kanpo.wablog.com/sitemap/を主宰されている、村田漢方堂薬局の薬剤師、村田恭介さんのサイトから引用します。

>たとえば虹彩炎などの眼科疾患の治療は、もっぱら対症療法としてステロイド点眼薬
>が主体であるが、体質によっては過敏に反応して、眼圧が上昇するよりも前に、ぐっ
>たりと体力を喪失してひどい鬱傾向を来たす人がある。
>これを漢方内服薬で治療するには、相当に高度な弁証論治に基づいた知恵と工夫を要
>するものである。
>ところが、意外に知られてないのが漢方点眼薬である。

>同業の薬剤師に相談されて、中薬学書籍でしばしば目にする熊胆(ゆうたん=くまの
>い)の点眼薬を試験的に使用してもらったところ、優れた消炎作用に驚いている。
>少なくともその人にとっては、あらゆるステロイド点眼薬よりも効果があり、しかも
>一年半以上使用して全く副作用がない。かかりつけの眼科医の先生にも、明らかな熊
>胆点眼薬の効果を認めてもらっており、しばしば生じていた虹彩炎が熊胆点眼薬を使
>用して以来、ほとんど生じることもなく、タマに気配を感じたときには濃度を上げる
>ことで直ぐに治まっている。

なお、有資格者(薬剤師自身)の自己責任において行っている試用であり、効果につ
いても眼科医による確認も得られているものの、医師による処方で無い限りは一般の
人は使えないので念のため!



 また、癌予防効果や、糖尿病治療への期待を説いた次の記事もあります。

「胆汁酸の癌予防効果に期待----代謝への広範な関与を示唆するデータも」

 胆汁酸は,大腸内で脂肪を分解するためにだけ存在するのではなく、胆汁の排出を促し,脂質,エネルギーと炭水化物の代謝,さらにはアポトーシスにおいても重要な働きを担っているようだ。オーストリアのグラーツ大学病院のMichael Trauner教授は「胆汁酸の意義が著しく過小評価されていることは明らかだ。肝内でコレステロールから生成される胆汁酸は、脂肪燃焼に重要な役割を担っているだけでなく、ホルモン類似作用を有する重要なシグナル分子でもある」とFalk財団主催の肝臓週間における記者会見で解説した。

<肝細胞を毒性の胆汁酸から守る>
 胆汁酸は常に生体に有利に働くわけではない。胆汁酸の一部は毒性を有しており,そう痒の原因となり、肝硬変を進行させ、細胞死を促すことが知られている。
 しかし、ウルソデオキシコール酸(UDCA)などの非毒性胆汁酸は全く別で,胆汁の排出を促し、肝細胞を毒性の胆汁酸から守り肝再生を促す。そのためUDCAは、例えば原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、妊娠性胆汁うっ滞の治療で既に使用されている。

 なおUDCAには癌の発生を抑える作用もあると考えられており、最新のデータからは結腸癌および胆管癌を抑える効果が示されているという。さらにTrauner教授は「動物実験データから推測する限り、将来は、胆汁酸がメタボリックシンドロームあるいは糖尿病に対して利用されるようになるかもしれない」と指摘。同データからは胆汁酸は脂質代謝だけでなく、エネルギーと炭水化物の代謝調節にも重要であることが示唆されているという[MT誌:07年2月8日 (VOL.40 NO.6) p.06]。


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catsduke

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by catsduke (2007-03-16 07:16) 

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