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双極性障害へのリチウム投与----障害領域の灰白質が増加

 UCLA精神医学の臨床神経心理学者であるCarrie Bearden助教授ら研究チームとピッツバーグ大学の研究チームは、双極性障害患者に対するリチウムの投与が脳の灰白質を増加させるとする結果をBiological Psychiatry(Vol 62-1:7-16)に発表した。

【標準的治療法だが機序は不明】
 リチウム投与は長年にわたり双極性障害の標準的治療法になっているが、この障害の特徴である周期的な躁状態とうつ状態を抑制する機序についての手がかりはこれまでなかった
今回の報告によると、リチウムは脳の障害領域の灰白質量を増加させるという。
 リチウムを服用している患者群と服用していない対照群の灰白質量を比較したところ、三次元MRI上で服用群の灰白質量が15%も多かった

 Bearden助教授は「リチウムを服用している双極性障害患者は、脳の帯状回と傍辺縁系の灰白質量が大幅に増加していた。これらの領域は注意・動機付け・感情を調節するが、双極性障害ではこれらの機能が著しく低下する」と述べている。なお、白質量に差は見られなかった

 今回の研究では、高分解能MRIと皮質パターンマッチング法を用いて双極性障害患者28例(うち70%がリチウムを服用)の脳マップを作成し、健常対照28例の画像と比較した。
 同助教授は「双極性障害患者における灰白質量の増加が、リチウム投与を中止しても持続するかどうかは、現時点ではなんらエビデンスがない」と付け加えている。[MT誌07年6月14日 (VOL.40 NO.24) p.29]


【コメント】
 医学が対症療法を主とした経験科学であり、「抑制する機序についての手がかりはなかった」のに、認可され使われている医薬品がある、という例の一つとして、作用機序判明前のアスピリンと並んで、このリチウムの話を自分の講義で学生によくしていました。  
 なので、MRIで「害領域の灰白質量を増加させる」という薬効が確認されたのは画期的だと思います。脳内のイメイジングが薬物療法のモニターとして、では今まであまり成されていなかったのか、あるいは今回のような解明に結びつくような方法が発案されていなかったのか、など不作為については疑問が残りますが。
 ところで判明したのは、いわば「結果」の検証だけであって、「リチウムという薬物の生化学的な作用機序」ではないように、この記述だけでは思えてしまいます。医学部の図書館がこの雑誌を購読しているかまだ調べていません(sciencedirectだから読めるとは思うのですが)。アブストラクトだけでは分かりませんので、暇があれば読んでみたいと思います。
 ただ現在は、ネコの糖尿病や膵炎関係の獣医学論文を優先していますので、理解できるのは大分先になると思います。厚かましいとは存じますが、精神科関係の方々で、結論を簡単にご教示頂ければ幸いです。


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