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抗真菌剤たちの意外な「実力」について----イトラコナゾールの血管新生抑制作用ほか [代替療法]

 ジョンズホプキンス大学・薬理学のJun O. Liu教授らは、足爪の真菌治療薬としてよく使われているイトラコナゾールに血管新生を抑制する作用があることを発見し、ACS Chemical Biology(2007; 2: 263-270)に発表した。同薬は既にヒトへの使用が承認されており、抗血管新生薬としての有用性から優先審査の対象になる可能性がある。

【プラセボに比べて67%減少】
 過剰な血管新生を起こさせたマウスにイトラコナゾールを投与すると、血管新生がプラセボに比べて67%減少した。Liu教授は「イトラコナゾールは突如、強力な血管新生の阻害薬として登場した。抗真菌薬にこのような作用があるとはこれまで予想しなかった」と述べている。

 今回の抗血管新生薬に関する研究では、豊富な血管を持つヒト臍帯から得た細胞に、安全性試験をパスしたが承認されていない薬剤や米食品医薬品局(FDA)と海外で承認された薬剤を含む2,400種類の既存の薬剤を作用させ、細胞の増殖を抑制するかどうかを調べた。

 同教授は「最良の結果は、承認ずみの薬剤が有効であることがわかることだった。この事実には非常に満足している」と述べている。
 抗真菌薬としてのイトラコナゾールは、真菌のコレステロール合成において重要な酵素を阻害する。これにより真菌は破壊・分解されやすくなる。同薬は血管でも同じ酵素を阻害するが、類似の抗真菌薬では抑制効果がはるかに低いため、これが血管新生を抑制する理由ではないとされている

 同教授は「今回のスクリーニング試験では、抗脂質異常症薬であるスタチン系薬も血管新生を抑制することが示されたコレステロールと血管新生の間には何か重要な関係があるようだ」と述べている。

 イトラコナゾールに大きな期待を寄せる同教授らは、同薬が血管新生抑制効果を示す正確な機序を解明しようと研究を続け、担癌動物での試験も行っている。「イトラコナゾールは真菌感染に対して経口で使用できるため、血管新生に対しても経口で効果があるかもしれない」としている。

【コメント】
 ガンの転移抑止に関して「血管新生」を阻害して補給路を断つという、Total Kill Theory以外のパラダイムが出てきたのは、代替医療で用いられてきたサメ軟骨由来の成分の抑止効果の発見以来、それを薬剤開発に応用しようという動きが出てからだと思います。
 イトラコナゾールにそうした効果があるのなら、少なくとも細胞毒による抗癌剤治療のような愚かな方策よりはマシであり、免疫療法や温熱療法などとの併用も可能な、安心できる、総合的な癌治療の一翼を担う可能性も出てきます。

 ところで、イトラコナゾールに限らず、抗真菌剤には、通常の用途=正作用以外の効果、すなわちプラスの副作用がある例が散見されます。例えば、次の報告はどうでしょう。




真菌感染症治療で白血病が寛解----3種の抗真菌薬を併用投与

 サンフランシスコで開催された抗微生物薬・化学療法インターサイエンス会議で、独・ハノーバー医科大学のMeinolf Karthaus准教授は、抗真菌薬のカクテル療法を受けた3例の白血病患者が回復し、主治医を驚かせたと報告した。投与された薬剤はアムホテリシンBと高用量のフルコナゾールおよびリポソーム化アムホテリシンBである。

<白血病患者の約30%に真菌感染症>
 白血病患者の多くは真菌感染症にかかりやすい。これらの感染症を治療するには、通常は白血病の治療をより軽くする、あるいは治療を中断する必要がある。白血病患者の約30%に真菌感染症が発症し、これらの感染症は衰弱や高熱をもたらし、感染患者の50〜90%は感染症のために死亡するとされている。

 Karthaus准教授は「白血病の治療は山の尾根を歩くのにたとえられる。一方は白血病の進行,他方は感染症である。どちらにでも落ちる可能性がある」と語っている。しかし3種類の抗真菌薬を3例の患者に投与したところ、真菌感染症が治癒したばかりでなく、白血病に対しても効果が見られたという。

 同准教授は「この3例が再発もなく、死亡することもなかったのは驚くべきことだ」と述べた。この治療がなぜ奏効したのかはわからないが、体内で産生される真菌と戦うサイトカイン類が白血病と戦い消失させたのではないかと推測している。特異的サイトカインとしては、インターロイキン-2やインターフェロンcが最も考えられると同准教授は言っている[MT誌00年1月20日 (VOL.33 NO.3) p.02]。


 また、次のような試験結果もあります。

抗真菌薬が腎疾患にも有効----腎糸球体疾患・間質性腎炎・糖尿病性腎症の進行遅らせる

 抗真菌薬として広く使用されているケトコナゾールが腎糸球体疾患・間質性腎炎・糖尿病性腎症の進行を阻害し、透析や腎移植を遅らせる可能性を示唆した試験結果がAmerican Journal of Kidney Disease(29:503-513)に報告された。

<透析や移植までの時間を遅らせる>
 この試験は米国立衛生研究所(NIH)とJanssen Pharmaceuticalの資金援助で行われたもので,筆頭著者であるジョンズ・ホプキンス大・薬学/分子科学のMackenzie Walser教授は「今回の知見が追試で証明されれば,ケトコナゾールは透析と腎移植に付随するリスク・コスト・不便さの軽減に有用とされるかもしれない。今回の成績はこのような慢性腎疾患に対する安全かつ有効な長期的アプローチの可能性を示唆するものだ」と述べた。

 同教授らは腎糸球体疾患(8例)・間質性腎炎(6例)・糖尿病性腎症(5例)あるいは嚢胞腎(5例)をケトコナゾール200〜600mg/日で1〜4年間治療。さまざまな程度の腎機能低下に対するケトコナゾールの効果が検討された。また大半の患者は試験開始前に処方された食事療法を受けていた。

 また、患者は2.5mg/日のプレドニゾンを投与されたが、これは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を増加させないためだ。ケトコナゾールはコルチゾールの産生を抑制するが、ACTHはフィードバック阻害により制御されており、このホルモンが増加すれば、コルチゾールの産生も元のレベルに戻ってしまう。Walser教授のグループは過去の研究で、このような「下垂体前葉エスケープ」効果はごく低用量のプレドニゾンで抑えることができ、ACTHの値を一定に保つことができることを明らかにしている。

 今回の試験の結果、疾患の進行は腎糸球体疾患患者で66%、間質性腎炎患者で55%、糖尿病性腎障害患者で77%遅らせることができたまた2例の腎糸球体疾患患者では進行の抑制が4年間続いたという。しかし嚢胞腎患者では逆に進行が99%も早くなった。Walser教授らは「嚢胞腎に対してケトコナゾールは明らかに無効あるいはむしろ有害だ」と結論している。

<嚢胞腎には有害>
 おもな副作用は肝障害で、これは真菌感染に対して使用した場合にも見られるものだ。今回の試験でも3例が副作用で治療を中断したが、その後副作用はすぐに消失した。

 ケトコナゾールは主要ステロイドホルモンであるコルチゾールの過剰産生を抑制することにより、腎障害の治癒を促進するのではないかと考えられている。Walser教授らは1988年に発表した研究のなかで、副腎からのコルチゾール産生量が多い患者では慢性腎疾患の進行が速く、逆に少ない患者では遅いことを明らかにしている。

 このことから同教授らは、コルチゾール産生量を減らせば腎障害の治癒を促進し、腎機能不全の進行を抑制できるのではないかと考えた。ケトコナゾールを選択したのは、同薬がコルチゾール産生を部分的に抑制することが知られていることと、簡単に手に入るからだという。

 無論、作用機序は個々のケースで異なるにしろ、抗真菌剤の見直しには、『ビッグ・ファーマ』で指摘されているような無意味な新薬開発に駆り立てられがちな医薬品業界の有り方とは対局にある、意味があると思います。


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