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フェリチンのみが鉄代謝阻害のパラメータに [基礎医学]

 独・ウルム大学病院内科のHermann Heimpel教授は「血清鉄の低下は鉄欠乏または全身性炎症の結果であると考えられるが、鉄貯蔵量が正常ないしは高い場合であっても血清鉄が低下していることがあるため、注意が必要である」とMedizinische Klinik(98: 104-107)に発表した。

<時間帯により検査値は変動>
 ドイツ国内では毎年延べ1000万〜3000万件の血清鉄検査が実施されている。しかし、Heimpel教授は「血清鉄を検査しても鉄代謝が阻害されているかどうかを判定できないため、実施されている検査の大半は余計なもので、確実なパラメータとなりうるのはフェリチンのみである」と主張している。
 
 血清鉄値の解釈に当たってはいくつかの問題がある。例えば、基準範囲がきわめて広いうえ、日内変動もきわめて大きい。健常者では午前中の値が最も高く、午後の遅い時間帯または夕方の値が最も低くなる。健常男性を対象とした試験では、午前9時時点の平均値は155μg/dLであったのに対し、12時間後にはわずか65μg/dLにまで低下していた。
 
 血清鉄は輸送蛋白質であるトランスフェリンとほぼ完全に結合しており、トランスフェリンの結合部位の20〜50%が3価鉄で飽和されている。血清トランスフェリンの半減期が21日であるのに対し、トランスフェリン結合鉄の半減期は60〜120分にすぎない血清鉄の測定時に把握できるのは、トランスフェリン結合鉄のみで、ヘム鉄ではないしたがって、ヘモグロビン血症も溶血も血清鉄には反映されない

<大腸癌が見落とされる恐れも>
 急性および慢性の炎症は、体内の鉄貯蔵量に関係なく血清鉄を減少させる。加えて、慢性炎症の場合には急性期蛋白質であるトランスフェリンの肝内での合成量が低下するため、同時にトランスフェリン値も低下する。さらに第2の機序として、アポフェリチン合成量の増加に伴い、鉄がマクロファージ内に取り込まれるため、トランスフェリン飽和度は鉄欠乏の場合と同様に低下する。したがって、血清鉄とトランスフェリン飽和度のいずれを検査しても、鉄欠乏性貧血と炎症性貧血との鑑別は不可能である。
 
 血清鉄の変化に気を取られて、結果的に誤った診断を下してしまうケースは後を絶たず、例えば、小球性貧血と血沈の上昇が見られたために炎症と思われたが、実際は大腸癌による失血のために明らかな鉄欠乏を呈していたというケースもある。
 このような理由から、複数の専門学会は、貧血の鑑別診断を目的とした血清鉄の測定を推奨していない。Heimpel教授は「鉄欠乏を裏づけることができるのは血清フェリチンのみである」と強調している。

 


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