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ビタミンD欠乏は糖尿病=β細胞の機能低下に関連 [ビタミンD]

 ビタミンD欠乏はβ細胞の機能低下に関連しているという研究結果が、American Journal of Clinical Nutrition(79:820-825 全文公開)に掲載されている。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部のKen C. Chiu, MDらによれば、血清25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]濃度で評価したビタミンD低下状態は、耐糖能異常のリスク因子として長い間疑われているという。「ビタミンDは、インスリン感受性とβ細胞機能の両方またはその一方に影響を及ぼすことによって、II型糖尿病の成因に一役買っている可能性がある」と、同博士らは記している。

 経口糖負荷試験後、耐糖能正常の健常者126例を試験に組み入れ、3時間のグルコースクランプ法によりインスリン感受性およびβ細胞の機能を評価した。一夜絶食後、体表面積に基づき(11.4g/m2)50%ブドウ糖液をボーラス投与した。15分後に30%ブドウ糖液の持続注入を開始し、血糖値を180mg/dLに維持した。

 第1段階のインスリン反応(1st IR)は、グルコースクランプ法で評価した2.5、5.0、7.5、10分後の血漿インスリン濃度の合計と定義した。第2段階のインスリン反応(2nd IR)は最後の1時間の血漿インスリン濃度の平均値と定義した。インスリン感受性の指標(ISI)は最後の1時間のブドウ糖注入率の平均値を2nd IRで割って算出した。

 25(OH)D濃度はISIと正の相関関係(p<0.0001)、1st IRと負の相関関係(p=0.0045)、2nd IRと負の相関関係(p<0.0001)にあった。重回帰分析では、25(OH)D濃度とISIの間にだけ独立した相関関係が認められた(p=0.0007)。ISIは1st IRおよび2nd IRと負の相関関係にあった(いずれもp<0.0001)。

 著者らによれば、これらの結果は、25(OH)D低値によってβ細胞の機能に何らかの影響が及ぼされ、血糖値を低下させる適切な代償性インスリン反応が妨げられるということを示しているという。

 さらに、経口糖負荷試験中の25(OH)D濃度は、独立して空腹時血糖値(p=0.0258)および負荷後60分(p=0.0011)、90分(p=0.0011)、120分(p=0.0007)血糖値と負の相関関係を示した。

 Adult Treatment Panel IIIで定義された代謝異常を2つ以上有する被験者を代謝症候群のリスク群に類別した。ビタミンD欠乏(20ng/mL未満)被験者の代謝症候群のリスク(30%)は、欠乏していない被験者のリスク(11%)よりも高かった。

「ビタミンD欠乏はII型糖尿病および代謝症候群のリスク因子である」と、著者らは記している。「この研究結果から、25(OH)Dを10ng/mLから30ng/mLに増加させることによってインスリン感受性が60%改善するということが推定される」。

 さらに「インスリン抵抗性の改善によってβ細胞に対する負担が取り除かれ、耐糖能異常が改善する可能性がある」と、同博士らは付け加え、基礎をなす機序を調べるためにさらに研究を行う必要があると指摘している。

 なお、この研究は、米公衆衛生局(PHS)および米国糖尿病・消化器疾患・腎疾患研究所(NIDDK)の助成を受けている。


【コメント】
 この論文をすっかり過去に紹介したつもりになっていましたが、過去ログをチェックして、まだだったことに気づき、今回の掲載となりました。

 ヒトの場合、北欧などの日光の乏しい地域の疫学的研究に関する過去記事も参考になりますし、ネコの場合、ストレス環境、フード中の澱粉由来のアミロイドーシスの問題、運動不足=肥満の問題もあるでしょうが、室内飼いに糖尿病が多い理由の一つにDの不足が関わるケースもあると思われます。

 Dは過剰摂取を恐れるあまりに最小限に設定されがちですが、ヒトのケースでも、本ブログの過去記事からも分かるように、過去考えられていた量より多くても問題が無く、かつオプティマル・ヘルスには必要らしいというエピデンスが揃いつつあるからです。そもそも、生化学的にはβ細胞には活性型ビタミンDレセプターがあることも、この記事の内容を裏付けています。

 ビタミンDに関しては、以下の専門書・一般書を参考にしてください。

岡野登志夫『ビタミンDと疾患ー基礎と臨床からの考察』 医薬ジャーナル社(2000)


中村・松本・加藤『骨代謝と活性型ビタミンD』ライフ・サイエンス出版(2006)


平柳 要『がん予防に実は「日光浴」が有効なわけービタミンDの驚きの効力』講談社+α新書(2008)


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