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膀胱がん発生率がブロッコリー・スプラウトのエキスで半減 [フィトケミカル]

 米・ロズウェルパークがん研究所のYuesheng Zhang教授(腫瘍学)らは、凍結乾燥したブロッコリーの新芽の濃縮エキスを投与したラットで、膀胱癌発生率が50%以上抑制されたと論文"Inhibition of Urinary Bladder Carcinogenesis by Broccoli Sprouts" Cancer Research(2008; 68: 1593-1600)に発表した。

Abstract
 Isothiocyanates are a well-known class of cancer chemopreventive agents, and broccoli sprouts are a rich source of several isothiocyanates. We report herein that dietary administration to rats of a freeze-dried aqueous extract of broccoli sprouts significantly and dose-dependently inhibited bladder cancer development induced by N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine. The incidence, multiplicity, size, and progression of bladder cancer were all inhibited by the extract, while the extract itself caused no histologic changes in the bladder.Moreover, inhibition of bladder carcinogenesis by the extract was associated with significant induction of glutathione S-transferase and NAD(P)H:quinone oxidoreductase 1 in the bladder, enzymes that are important protectants against oxidants and carcinogens. Isothiocyanates are metabolized to dithiocarbamates in vivo, but dithiocarbamates readily dissociate to isothiocyanates. We found that >70% of the isothiocyanates present in the extract were excreted in the urine as isothiocyanate equivalents (isothiocyanates + dithiocarbamates) in 12 h after a single p.o. dose, indicating high bioavailability and rapid urinary excretion. In addition, the concentrations of isothiocyanate equivalents in the urine of extract-treated rats were 2 to 3 orders of magnitude higher than those in plasma, indicating that the bladder epithelium, the major site of bladder cancer development, is most exposed to p.o. dosed isothiocyanate. Indeed, tissue levels of isothiocyanate equivalents in the bladder were significantly higher than in the liver. In conclusion, broccoli sprout extract is a highly promising substance for bladder cancer prevention and the isothiocyanates in the extract are selectively delivered to the bladder epithelium through urinary excretion.

アブストラクト[Catsduke訳]
 イソチオシアネートは、癌の化学予防物質として有名な部類に属し、ブロッコリー・スプラウト(もやし)はイソチオシアネート類の豊かな供給源である。我々はここにラットにブロッコリー・スプラウトのフリーズドライ水性エキス経口投与が、有意かつ用量依存的にN-ブチル-N-(4-ヒドロキシブチル)ニトロソアミン誘導の膀胱癌を抑制したことを報告する。

 膀胱癌の発生率・多重度・大きさ・進行は全てこのエキスによって阻害されたが、エキス自体は膀胱に何ら組織学上の変化を引き起こさなかった。その上、エキスによる膀胱癌の発癌阻害は、膀胱でのグルタチオンS-トランスフェラーゼとNAD(P)H-キノン酸化還元酵素1の誘導と相関しており、これらの酵素は活性酸素種や発癌物質に対抗する重要な保護剤である。エキス中にイソチオシアネート70%以上が含まれる時、イソチオシアネート類(イソチオシアネート+ジチオカルバメート)として1回の経口投与の12時間後に尿中排泄され、高い生体内利用率と急速な尿中排泄を示すことを我々は発見した。

 さらに、エキスを投与されたラットのイソチオシアネート類の尿中濃度は血漿中濃度よりも20〜30倍高く、膀胱上皮、即ち、膀胱癌の好発部位が経口摂取されたイソチオシアネートに最も晒されることとなる。しかし、膀胱におけるイソチオシアネート当量の組織レベルは肝臓内濃度より有意に高かった。結論として、ブロッコリーのもやしエキスは膀胱癌予防のために非常に前途有望なものであり、エキス中のイソチオシアネートは尿中排泄を通して選択的に膀胱上皮に運ばれる。


<有効成分は成長株の30倍>
 研究責任者のZhang教授は「ブロッコリーなどアブラナ科の野菜の摂取が膀胱癌リスクの低下に関係していることは、既にヒトにおける疫学研究で示唆されてきたが、今回の知見はそれを補足するものである。動物実験ではあるものの、野菜摂取が膀胱がん予防に有益であるとの強力なエビデンスを提供するものである」と述べている。

 アブラナ科の野菜が持つ有益な作用の一端を担っているのは、フィトケミカル(植物由来化合物)の1種で癌予防作用があることでよく知られているイソチオシアネート(ITC)で、既に強力なエビデンスが存在する。
 同教授は「膀胱は、特にこの種の天然化合物に対する感受性が高い。今回の実験では、ITCはブロッコリー新芽エキスの経口投与後に尿中に排出され、膀胱組織に選択的に送られた」としている。

 ITCを含む他のアブラナ科の野菜にはブロッコリーの成長体・キャベツ・チリメンキャベツ・コラードの若葉などがある。ブロッコリー新芽には、成長体と比べて約30倍、今回用いられた新芽エキスには約600倍のITCが含まれていた。

 ラットモデルでは、高用量エキスの投与群で膀胱がん予防効果が最も高かったが、ヒトの場合、膀胱癌高リスク患者であっても予防効果を得るためにそれほど大量のブロッコリー新芽を摂取する必要はなさそうである。

 同教授は「ヒトでは食品からのITC摂取やアブラナ科の野菜摂取が膀胱癌リスクと逆相関することが疫学研究で示されている。膀胱癌予防には、今回ラットに投与したITCの量よりもはるかに少ない投与量で十分だと思われる」と述べている。

<発がん率や腫瘍径などが減少>
 今回の研究では、目的を膀胱癌予防効果の検討に絞り、ラットを(1)安全性検討のためにブロッコリーエキスのみを投与する群、(2)膀胱がん誘発因子であるN-ブチル-N-(4-ヒドロキシブチル)ニトロソアミン(BBN)を飲料水に混入して摂取させる群、(3)対照群の3群に分け、BBN投与群をさらに3群に分け、うち2群にはBBN投与の2週間前から低用量または高用量のブロッコリーエキスを食餌に混入して与えた。

 対照群とブロッコリーエキスのみ投与群では発癌せず、エキス投与による毒性も認められなかった。BBNのみ投与群では、約96%で平均約2個のさまざまな径の腫瘍が発生した。これに対し、低用量エキス投与群では、腫瘍発生率は約74%に低下し、1匹当たりの平均癌発生数は1.39であった。高用量エキス投与群では、腫瘍発生率は約38%まで低下し、1匹当たりの平均癌発生数は0.46で、しかも他の群と異なりほとんどがきわめて小径であった。[MT誌08年5月22,29日(VOL.41 NO.21,22) p.38にCatsdukeがアブストラクト翻訳を追加]


【コメント】
 [参考]村上農園「ブロッコリースーパースプラウト」
   http://www.murakamifarm.com/market/bss/index.html
(スーパー)
(一般)

 なお、サプリメントですが、流石にまだBig Brandでも、Sulfurophanesが標準化されたものしかありません。

Vitamin Shoppe Broccoli(100 Caps)$11.99
1 Capsule 500mg contains 200mcg of Sulfurophanes


Source Naturals Broccoli Sprouts(60 Caps)$15.18
1 Capsule 250mg contains 1000mcg of Sulfurophanes


Solgar Broccoli Cruciferous Extract(50 Caps)$17.20
1 Capsule 500mg contains 10mg of Glucosinolates

*Glucosinolatesはsulphoraphaneの前駆体です。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------- 【080718追記】
 ブロッコリなどに含まれる、このスルフォラファン(Sulfurophane)が、抗酸化酵素の誘導等を通して老化組織における抗酸化防御系を再活性化することで免疫老化を防ぎ、広範囲に抗酸化防御経路を刺激する能力を有し、免疫機能の老化に関連した低下を阻害するという一大発見がありました。

【ブロッコリー中の化学物質--免疫力回復に有用な可能性】
 米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のデービッド・ゲッフェン医学部ナノ医学主任のAndre Nel博士らは、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜に含まれる化学物質が、老化により低下する身体の免疫力を回復させる可能性があるとの知見を論文"Nrf2 activation by sulforaphane restores the age-related decrease of TH1 immunity: Role of dendritic cells"でJournal of Allergy and Clinical Immunology(2008; 121: 1255-1261)に発表した。


<抗酸化経路の重要性を示唆>
 今回の知見は、ブロッコリーに含まれる化学物質スルフォラファンが特異的免疫細胞のなかで一連の抗酸化遺伝子や酵素を発現させ、これが細胞を損傷させ、疾患を引き起こすフリーラジカルに対して有効であることを示している。

 フリーラジカルは、食物からエネルギーへの代謝変換など正常な過程の副産物で、汚染大気中に存在する微粒子を通しても体内に侵入する。このような分子は、例えば、動脈閉塞を引き起こす炎症を誘発するなど、疾患を惹起する酸化的な組織障害をもたらし、身体組織や器官に対する酸化的な障害は老化の主要な原因の1つであると考えられている。

 研究責任者でUCLAの臨床アレルギー学者および免疫学者でもあるNel博士らは「フリーラジカルが老化にとって重要であることがわかってから今日まで、興味の中心はこの産生抑制のための経路よりも、むしろフリーラジカルを産生する機序に対して向けられてきた」と述べている。
 体内のフリーラジカル産生を高める機序とフリーラジカルに対抗する抗酸化経路の機序との間には動的平衡が存在している。

 同博士らは「今回の研究は、体内のフリーラジカルと闘うために用いる防御的な抗酸化経路の重要性に対する理解を深めるのに寄与している。このような過程を洞察することで、老化の作用を減弱させる可能性のある方法が明らかにされている」と述べている。

 体内の酸化力と抗酸化力との間の微妙なバランスは、心血管疾患・変形性関節疾患・糖尿病のほか、感染物質から防御する免疫能の低下など、多くの老化関連疾患の予後に影響する。
 同博士は「免疫系に対する酸素ラジカルの影響によって、疾患や感染症と闘い、がんから防御する免疫能は老化に伴って低下する」としている。

<免疫反応が増強>
 これまでの研究から、老化組織における抗酸化防御系を再活性化させる能力は、フリーラジカルが免疫系に及ぼす多くの有害な影響を阻害するために重要な役割を担っている可能性が示されている。しかし、今回の研究までは、免疫系の老化過程に抗酸化防御が影響を及ぼす可能性については十分に理解されていなかった。

 Nel博士は「酸化ストレス損傷に対する防御は、老化の速度や発現、老化過程への関与に多大な影響を及ぼす可能性がある。今回の研究から、ブロッコリーには、広範囲に抗酸化防御経路を刺激する能力を有し、免疫機能の老化に関連した低下を阻害する可能性を持つ化学物質が存在することを示している」と述べている。

 ブロッコリーに含まれるスルフォラファンの直接投与が老齢マウスの細胞性免疫機能の低下を抑制したことだけでなく、老齢マウスから得た個々の免疫細胞を体外でスルフォラファンにより処理し、その細胞をレシピエントマウスに移植した場合にも同じ結果が得られることがわかった。

 また、感染物質や異物を免疫系に取り込む樹状細胞をスルフォラファンで処理すると、老齢動物の免疫機能の回復に特に有効であることが判明した。

 筆頭研究者で同学部のHyon-Jeen Kim氏は「老齢マウスをスルフォラファンで処理することにより、免疫反応が若年マウスのレベルまで増強されることがわかった」と述べている。[MT誌08年7月17日(VOL.41 NO.29)p.68]
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 また、ブロッコリーに関しては、過去記事「トマトとブロッコリは前立腺癌の進行を遅らせる[拙訳]」を参照。

 なお、アブラナ科の野菜、特にブロッコリーが体に良いのはまちがいのないところですが、「おもいっきりテレビ」的に一物集中主義的にそればっかりになるのは問題です。

 そも、ブロッコリー自体が、中国・米国産のものを筆頭に高農薬です。有効成分がいくら捕れるとしても農薬の解毒に関わる薬物代謝や分解不能なものの体内蓄積などのデメリットと差し引きすれば、結局体にいいのかどうか怪しくなってしまいます。

 増尾 清先生の諸著作、例えば『農薬・添加物はわが家で落とせた』など参考にされて、農薬の除去をしてから家族の口に入れるのが最低限の主婦の務めでしょう。信頼できる無農薬農園(無農薬と謳う低農薬・高農薬商品はいくらでもある。船場吉兆!)のものをえらび、小房に切り分け塩水をはったボウルでさっと洗ったあと、1分程度の茹でこぼしはして農薬を溶け出させ排除してから各種調理に利用しましょう。


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