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レスベラトロールが糖尿病合併症を予防 [糖尿病]

 英・ペニンシュラ医科大学の生物医学・臨床科学研究所のMatt Whiteman博士らは、ブドウの皮に含まれる天然化合物レスベラトロール(resveratrol)は、糖尿病患者で大量に産生されるブドウ糖の血管内皮細胞傷害作用を抑制し、心疾患・網膜症・腎症などの糖尿病合併症を予防できる可能性があるとDiabetes, Obesity and Metabolism(10: 347-349)に論文"Resveratrol blocks high glucose–induced mitochondrial reactive oxygen species production in bovine aortic endothelial cells: role of phase 2 enzyme induction?"(「レスベラトロールは、ウシ大動脈内皮細胞における高血糖誘発性ミトコンドリア由来活性酸素種の産生を防ぐ:薬物代謝第2相酵素の役割?」)を発表した。


【ブドウ糖の細胞傷害作用を抑制】
 糖尿病患者の血糖値が上昇すると、細胞内でエネルギーをつくり出すミトコンドリアが傷害され、細小血管系および大血管系の合併症を引き起こす。ミトコンドリアの機能が障害されると電子が漏洩して有害な"フリーラジカル"が発生し、腎症、心疾患、網膜症といった合併症の発症につながる。

 レスベラトロールは細胞を保護する酵素の産生を促して、この電子の漏洩と高毒性のフリーラジカル産生を抑制し、ミトコンドリアの機能傷害に歯止めをかける。
 Whiteman博士は「今回の研究では高血糖が細胞構造に及ぼす損傷作用、さらにレスベラトロールの保護能と修復能が明らかになった」とし、「レスベラトロールやその関連化合物はブドウ糖の細胞傷害作用を抑制し、糖尿病合併症の発症を予防できる可能性がある。また、今回の結果は将来、高血糖に起因する内皮傷害の予防に効果的な食事療法のエビデンスとなりうる」と述べている。[Medical Tribune誌08年8月7日(Vol.41 No.32) p.74]

[コメント]
 Whiteman博士は、かつてフラボノイド(エピカテキン・ケルセチン)代謝物のペルオキシナイトライトへの抗酸化力の序列を最初に調べたり(Biochemical and Biophysical Research Communications 2006 ;350:960-8.)、シンガポール国立大医学部生化学のグループとして醤油の抗酸化活性を調べたり(Free Radic Res. 2007:479-88.)と抗酸化物に関する研究で知られており、また本研究の前段階となる研究として、2005年にオルチプラッツを用いて第2相酵素反応の内因性酸化ストレスと細胞死防御反応について研究され(Biochemical and Biophysical Research Communications 337:375-81.)、2007年に細胞内およびミトコンドリア内活性酸素種の測定法を開発(Methods in Cell Biology 80:355-77.)なさっています。


 ちなみに、そも住血吸虫用治療薬として開発されたオルチプラッツ(oltipraz ; 4-methyl-5-(pyrazin-2-yl)-1,2-dithiole-3-thione)は、抗酸化性を持ち、また合成ジチオールチオンであるので、ブロッコリーに豊富に含まれるグルコシノレート類の1種たるジチオールチオン同様の成分でもありますが、非核酸系逆転写酵素阻害剤で、ペンツピレンによる胃癌発症を低下させることが知られており(Nrf2欠失マウスでは発癌抑制効果が認められなくなることからNrf2の関与を示している)、癌の化学予防に資する物質と考えられています。

 さて、レスベラトロール(Resveratrol)は、最初、ブドウの皮から分離され、有名になった抗酸化物質ですが、現在では、イタドリ[英名:Japanese knotweed、学名:Polygonum cuspidatum、中国名:虎杖(Hǔzhàng)]から抽出する方法が安価なため、サプリメントの原料など、商業的にはこちらが多く用いられています。



 この虎杖根=イタドリ根は、民間では、鎮咳薬・鎮静薬・止血薬とします。名の由来は「痛取り」の意味で、痛みを取るからとされています。 膀胱炎・膀胱結石・便秘・黄疸・関節炎・リューマチ・月経不順などに、1日量8~10グラムに、水0.5リットルを加えて、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして、1日3回に分け、食間に服用します。 漢方薬としては、緩下薬・利尿薬・通径薬として常習便秘や老人の下痢、膀胱炎・膀胱結石・月経不順・閉経に用います。

 中医学的には「利湿退黄薬」であり、急性肝炎・胆嚢炎・胆管炎などの湿熱黄疸の際に黄疸を軽減させる効果を持ち、また活血祛瘀作用があるので妊婦には慎重に投与すべしとされています。化痰止咳作用があるので肺熱咳嗽に用いられ、腎・泌尿器疾患では強い抗菌力を持つので尿路感染症に対する通淋作用を目的に使用されています。

 ところが、なぜか同じく伝統的な漢方薬であるHe Shou Wu(何首烏:Polygonum multiflorum,英名:Chinese Knotweed。ツルドクダミの塊根)と混同されている場合があります(米Wikiで混同されていたので訂正しておきました。笑)。 ちなみに何首烏を単味でハーブ的に使用した場合には、肝障害が報告されているのです(「英 MHRA,Herbal Safety News "Polygonum multiflorum and liver reactions" 2006/04/11>」)。

ちなみに、次のような製品があります。

Puritan's Pride Resveratrol 60 softgel caps 100mg $16.19(3個セール価格。実際は1/3)

1Cap中にResveratrolは100mg。イタドリ=虎杖根から抽出したもの100%で、ブドウ由来の他のフラボノイドは含まれない。


Nature's Way Resveratrol Synergistic Formula 60Caps $9.95

1Cap中に75mg Resveratrol=50%標準化。
他にブドウ種子エキスからの95mg ポリフェノールと赤ワインエキスからの30mg ポリフェノールが含まれる。


Transmax Resveratrol 500mg 60 Caps $69.99

1錠中に500mg Trans-Resveratrol 。虎杖根エキスとしては98%標準化。老化制御でも注目されている。パウダーで買えないのだから、この高純度のカプセルを買って小分けした方が割安かも知れない。


 レスベラトロールは、アポトーシス誘導効果を持つ抗癌薬・抗炎症剤として(Nutr Rev. 66:445-54.)や、癌化学予防薬として(Int J Vitam Nutr Res. 78:3-8.)や、ケルセチン・カテキンとの合剤でヌードマウスモデルで乳癌細胞の成長抑制剤として(Transl Oncol. 1:19-27.)、髄芽細胞腫を用いて STAT3の阻害を研究したもの(Neoplasia. 10:736-44.)など、多くの研究がありますが、最近、化学予防薬および治療薬としての機序の総説が発表されています(Cancer Letter Available online 11 June 2008→すでに終了)。






【参考書】
吉川敏一『フラボノイドの医学』(講談社サイエンティフィク)


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