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葉酸添加で大腸癌が増加 [ビタミンB群]

 北米では穀類製品に葉酸を添加することが義務付けられているが、加・トロント大学医科栄養学のYoung-In Kim助教授とグアテマラ知覚異常加齢代謝研究所のNoel W. Solomons所長は,葉酸の添加開始以降に大腸癌の診断例が増加したとの知見を、Nutrition Reviews65: 504-511512-515)に発表した。

<摂取年齢で異なるリスク便益比>
 葉酸はビタミンB群の一種であり、米国とカナダではほぼ10年前から小麦粉などの穀類製品に添加されてきた。この施策は、脊髄や中枢神経系の発達に影響が生じる先天異常の発生率が葉酸摂取により低下するとの報告を受けて行われてきたものである。一方、米国では同時期に、結腸鏡検査が広く行われるようになり、不可解にも大腸癌の発生率が上昇した。カナダは米国にやや遅れて葉酸添加を開始したが、同様の傾向が認められている。

 Solomons所長は,栄養強化のリスク便益比は年齢により異なるため、先天異常の予防を目的とした葉酸添加の方法は再検討されるべきとし、栄養強化が任意である食品(シリアルや清涼飲料など)中の葉酸濃度を下げる、出産可能年齢の女性を強化標的とする方法などが検討に値すると考察している。

 Kim助教授は「葉酸添加は"諸刃の剣"で、摂取の時期により益にもなれば害にもなる。小児期および青年期に葉酸を豊富に摂取すると、大腸などの臓器における癌発生の抑制傾向が生涯にわたって継続すると考えられるが、細胞の損傷が生じる中年期以降に摂取した場合は腫瘍の進行を早める可能性がある」と述べた。[MT誌07年12月13日 (VOL.40 NO.50) p.01]

【コメント】
 こういうことがあるから、単純かつ安易にサプリメンテーションは行えない訳です。うちのタマも貧血が解消されましたし、ヴィタミンCの大量投与とB12・葉酸の損失の関連を否定する論文を確認してからは葉酸添加は止めています。妊娠可能性のある女性にのみ二分脊椎などの防止用に服用を勧めるのが、ベストだと思います。


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心不全入院患者にチアミン[B1]欠乏症多い----サプリメントで改善 [ビタミンB群]

 加・トロントの聖ミカエル病院のMary E. Keith博士は、心不全入院患者の3人に1人がチアミン欠乏症であるが、ビタミンサプリメントを摂取している患者ではチアミン欠乏症が少ないことをJournal of the American College of Cardiology(2006; 47: 354-361)に発表した。



【3分の1が標準より低い】
 Keith博士は「うっ血性心不全で当院に入院している患者の3分の1は、赤血球内チアミン値が標準より低くなっており、欠乏症が疑われる。以前の研究結果と異なり、われわれの研究ではチアミン欠乏症と、利尿薬の使用期間や排尿中のチアミン量との相関関係は見出せなかった」と述べている。

 そのメカニズムについては「心不全を引き起こすとチアミンを含む特定の栄養素の必要性が増加するため、比較的よい食事をしている人でもそのような栄養素が不足するのかもしれない。あるいは疾患のせいで適切な食事が維持できないのかもしれない」と説明している。

 さらに「この研究は、心不全のような重度の疾患には食事の管理が重要であることを示している。医師も一般の人々も薬剤治療のみに集中し、健康維持に欠かせない適切な栄養をないがしろにしている」と付け加えている。

 ビタミンB1とも呼ばれるチアミンは、炭水化物の消化などの機能を有し、体内に蓄えておくことはできない。したがって、不適切な食事により短期間で欠乏症に陥りやすく、心不全症状をさらに悪化させると思われる。同博士らは「心不全患者のチアミン欠乏に関する研究があまりないことは憂慮すべきだ」と述べている。心不全患者の多くが適切な食事を取らず、また心不全に処方されている利尿薬によりチアミンが失われるのではないかという研究も見られる


 今回の研究は、心不全入院患者を対象としたチアミン欠乏の調査ではこれまでで最大規模で、さまざまな重症度の患者が含まれている。筆頭研究者で聖ミカエル病院・トロント大学のStacy A. Hanninen研究栄養士らが、心不全で入院した患者連続100例と、健常対照群50例のチアミン値を計測したところ、患者群では対照群に比べてチアミン欠乏症が3倍だった(33% vs. 12%、P=0.007)。

【比較的少量でも予防可能】
 Keith博士は「被験者は当院の心不全患者をよく代表するグループである。チアミン値は、赤血球中チアミン・ピロリン酸塩を使って直接計測した。酵素の活性を間接的に測定する以前の方法より正確である。また今回の研究では、利尿薬以外にもチアミン欠乏をもたらす可能性のある食事・疾患の状態・人口統計学的な要因も審査対象とした。これまでの複数の研究結果に反して、チアミンの損失・量・利尿薬との相関は示されなかったが、この点では研究にはまだ議論の余地がある」としている。

 同博士は「今回の被験者は、さまざまな重症度を示しており、入院前の利尿薬の用量も異なるため、入院患者の一断面となっている。そのせいで利尿薬の使用とチアミン欠乏症の関連が見出せなかったのかもしれない。

 さらに重要な発見は、マルチビタミンなどから摂取できる比較的少量のチアミンでも、チアミン欠乏症の発症を予防することであった。ただし、これは統計学的に有意ではなく(P=0.06)、サプリメントなどの方法でチアミン欠乏を改善すれば、心不全の症状の改善に役立つかどうかは、今後の研究を待たなければならない」と述べている。

【他の微量栄養素欠乏のマーカー】
 今回の研究には参加していないハル大学(英キングストンアポンハル)のJohn G. F. Cleland教授は「心不全患者には適切な食事を維持できない理由が多くあるにもかかわらず、栄養についてほとんど注目されていないのは驚くべきことである」と指摘。「進行した心不全患者の多くが心臓悪液質に罹患しているが、その機序や治療法についてはほとんど知られていない。チアミンなどの1つの栄養素の欠乏が単独で起こることは少ないので、それはおそらく他の微量栄養素欠乏のマーカーとなっているのだろう。高齢の心不全患者に多くの微量養分を補給すると、QOLや左室機能が改善することが近年の研究で示唆されている」と付け加えている。

 同じく今回の研究に参加していないニューヨーク大学医療センターのJill Kalman博士も、「この結果は心不全患者の治療の向上に役立つ。心不全においてはどのように代謝異常が発生するかを突き止め、効果的かつ安全な方法でそれを補い、アウトカムを変えることがこの研究の重要な点だと思う。また、心不全治療の何かが代謝異常を引き起こしているかを突き止めることも重要である」と述べている。[06年4月20日 (VOL.39 NO.16) p.39]

【コメント】
 上の報告で、Keith博士は「われわれの研究ではチアミン欠乏症と、利尿薬の使用期間や排尿中のチアミン量との相関関係は見出せなかった」と述べていますが、利尿薬にはMgを排出させてしまうものがあります。そして、チアミン=B1の保持にはMgが必要なことが確かめられています(糸川嘉則「B群ビタミンと生理活性ミネラルの栄養学的相関」"ビタミン"(2006;80:543-548)など。

 使用した利尿薬の種類に関わる可能性があるのと、Ca・Mg・Pなどメジャーミネラルの食餌による摂取バランスからくる相対的なMg摂取量もしくは欠乏量の把握による補正がなければ、試験のデザインによっては、そういった関係があっても把握できないかもしれません。


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