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ビタミンDは健常児でも不足ーービタミンD過剰摂取のリスクとは? [ビタミンD]

 フィラデルフィア小児病院栄養人類学者のBabette Zemel博士らは、健康な小児や若者の多くがビタミンDの血中濃度は低く、くる病などの骨疾患リスクにさらされていることをAmerican Journal of Clinical Nutrition(86: 150-158)に発表した。同博士によると、血中ビタミンD濃度が低い可能性が高いのは、アフリカ系米国人の小児、9歳以上で食事によるビタミンDの摂取量が低い小児であるという。



<半数以上が低ビタミンD濃度>
 今回の研究の対象となったのは、米国北東部に在住する6~21歳の健常児382人で、それぞれビタミンDの血中濃度を測定した。

 筆頭研究者のZemel博士らは、これら小児の食事ならびにサプリメントによるビタミンDの摂取量と体重を評価した結果、半数以上で血中ビタミンD濃度が低いことがわかった。対象者の55%で血中ビタミンD濃度が不足しており、68%は冬季における血中ビタミンD濃度が低かった。
 同博士は「ヒトのビタミンDの状態を表す最も優れた指標は、ビタミンDの代謝物の1つである25ヒドロキシビタミンDの血中濃度である。現在ビタミンD欠乏症の問題は総体的に過小評価されており、小児では十分な検討がなされていない」と指摘している。

 ビタミンDは健康な筋骨格維持にきわめて重要である。食事によるビタミンDのおもな供給源には強化牛乳が挙げられるが、ビタミンDレベルを上げる最良の方法は日光に当たることである。ビタミンDの不足が著しいと、筋肉の脆弱化・骨石灰化障害ならびにくる病を来す可能性がある。
 さらにビタミンDは筋骨格系以外にも、免疫機能に重要な役割を果たしており、血中濃度が低下すると高血圧・癌・多発性硬化症・1型糖尿病などを誘発する可能性もある。また血中ビタミンD濃度の低下と肥満との関連も指摘されている。

 同博士は「小児における適切なビタミンDの血中濃度を究明するには、さらに研究を重ねる必要がある」とし、現行のビタミンD推奨所要量を見直す必要性についても言及した。


【コメント】
 過去記事でも紹介したように、ビタミンD=くる病予防といった中学保健体育レベルの知識では論外で、ステロイド骨格を持つホルモンとしての働きがVDR(ビタミンDレセプター)を細胞が持つという事実に裏打ちされています。同じくRXRなどのレセプターを持つビタミンAと並んで癌治療にも応用されつつある訳ですし、糖尿病との関係が取りざたされています(高緯度のヒト=室内飼いの猫には糖尿病が多くなる)。

 さて、本記事に先立ち、"Risk assessment for vitamin D"という論文が同誌AJCN (85: 6-18全文)ですでに発表されています。アブストラクトを紹介します。

[Catsduke訳]
 本レビューの目的は、食品栄養委員会(FNB)が使用しているリスク評価の方法論を、新たなビタミンDの安全な上限摂取耐用量(UL)を得るために適用することだった。現在、骨への役割を越えるビタミンDが持つ健康上の利益に関する新しいデータが続々と報告されている。

 そして、それらの利益をもたらしうる摂取量は、サプリメントという形であれ、食品への栄養強化という形であれ、あるいはその併用であれ、現行の摂取レベルより高いものだった。
 とはいえ、気になるのはビタミンDの過剰摂取に伴う潜在的な毒性である。ところで食品栄養委員会によるビタミンDの上限摂取耐用量(50 µg=2000 IU)は、現在得られているエピデンスに基づくものではないのに、多くの人々に極めて拘束的なものとして参照されたために、研究や商業的発展や栄養政策の改善を阻害している。 実際、より高い上限摂取耐用量を支持するヒトの臨床試験データは、食品栄養委員会による1997年発表のビタミンD上限摂取耐用量の策定後に発表されているのである。

 そこで、我々はそれらの、うまく設計され、しかも相互に関係を有すると思われるヒトのビタミンDの諸臨床試験データに基づいてリスク評価を提示することにした。結論として、健康な成人に250 µg[10000国際単位]/日 以上のビタミンD3を用いて実施された諸試験で毒性が無かったという事実は、この数値を確たる上限摂取耐用量とできることを支持している。


 ここでは、日焼け由来+食餌(通常食・D強化食)由来+サプリ由来の合計量でも、推奨上限摂取耐用量である250 µg[10000国際単位]/日には及びもせず、まだ血漿中25(OH)D 濃度は500 nmol/L程度であり、これは高Ca血症を招くと見られる濃度である600 nmol/L以上には遥かに及ばないので、過剰摂取の危険性なしにビタミンDの摂取量を増やす十分な余地があるとしています。紹介されている例の中には2500 µg=2.5 mg=10万IUの短期・長期投与の例もあります。

 一般的に、アメリカのサプリメントで、タラ肝油由来のA・D合剤は1カプセルあたり各10000IU/400IUが安価でかつ標準的です。通常は脂溶性ビタミンたるA・Dは過剰摂取を戒め、メガドーズの対象から外すものです(そしてその常識を悪用して敢えて情報を混同させEまで大量摂取させまいとした上に、最近ではより積極的にEに毒性があるかのような情報操作をする向きもあります。非科学的です)が、こういう研究が出てくることで、さらに安全に治療可能な病気が増える事が望まれます。


【コメント】
 ビタミンDに関しては、以下の専門書・一般書を参考にしてください。

岡野登志夫『ビタミンDと疾患ー基礎と臨床からの考察』 医薬ジャーナル社(2000)


中村・松本・加藤『骨代謝と活性型ビタミンD』ライフ・サイエンス出版(2006)


平柳 要『がん予防に実は「日光浴」が有効なわけービタミンDの驚きの効力』講談社+α新書(2008)


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