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ビタミンCがガン細胞を殺す (角川SSC新書11)【書評】 [ビタミンC]


柳澤厚生 『ビタミンCがガン細胞を殺す 』 (角川SSC新書 11)角川・エス・エス・コミュニケーションズ
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 本書は、ハンディな形では本邦で初めての、全米で1万人の医師が用いているビタミンC=アスコルビン酸によるガン治療の最新研究の紹介である。著者は、杏林大医学部内科助教授を経て、現・同大保健学部救急救命学科の柳澤厚生教授である。
 
 みのもんた氏などの番組のおかげで、健康や美容に興味のある者なら、今や主婦や女子学生にまで人口に膾炙した「活性酸素」という語。
 
 我々が陸生生物となって、太古の海から上陸して以来、水中に比して高濃度な酸素分圧環境で生きるために、体内では様々な抗酸化酵素を作り、外部から食物として、植物由来の抗酸化物を取り入れて、酸化=老化の進展を防いできた。

 ヒトはモルモットやフルーツコウモリなどと同様に、最もシンプルな抗酸化物であるアスコルビン酸の体内での合成能を失った。ジャングルで過ごしていた我々の先祖は豊富な果物から容易にビタミンCを得ることができたからであろう。

 しかし、ヒトはアフリカのジャングルを出て、世界へ出て行った。そのため、内因性の、自身で合成可能な抗酸化物は尿酸のみになった。ビタミンCが容易に得られない環境で行動するようになったヒトは、結晶化寸前までの高濃度の尿酸を代償的に合成するようになったことで、長寿も得た(哺乳類の血漿中尿酸濃度と寿命は相関しているのだ!)が、その引き換えに「痛風」を病む可能性も得たのだ。
 
 ラットは回転車や水泳など、ストレス環境におかれると、アスコルビン酸の体内合成量が何倍にも増加する。他の動物もそうである。例えば、ストレスホルモンであるコルチゾールの生合成にも分解=薬物代謝にもアスコルビン酸を消耗するからである。実際に、数倍から数十倍にまで変化する。

 本来、アスコルビン酸を合成不能なヒトならば、いくら抗酸化酵素による防衛システムが他の動物よりも高度だとはいえ、個々人の置かれた様々な環境によって変化するビタミンC所要量がたったの数十mgですむ訳は無い。
 現代はそもそもがストレス社会である上、無理な労働をせざるを得ない者やプロ選手など過剰なスポーツを行う者、さらには病態下にある者であれば、普通の食品から普通に得られるかどうかも怪しい通常の所要量ですむ訳は無い。動物はヒト体重に換算すれば数gから数十gまで合成量が増加するのである。その一方で、現在の野菜中のビタミンは環境のせいで昔に比べてどんどん減っているのだ。
 
 ノーベル化学賞・平和賞受賞者であるライナス・ポーリング博士は70年代にすでに「遊離基」という言葉で、フリーラジカル=活性酸素に触れ、その対策として、ビタミンCの薬理量摂取を主張していた。

 しかし、ジャガイモ澱粉から大量生産が可能で安価なビタミンCで多くの疾患が治るとされたのでは、医師会も製薬資本も面白い訳は無い。しかも博士は生化学の大家ではあっても医学博士ではない。当時の医者は賭場荒らしをされたような思いを抱いた。
 また医療の専門家支配に、製薬資本に対抗し、市民が健康自主管理せよと主張したのだから、そのロビイストの要請を受けた政治家からの圧力で、反権力=左翼がかったユダヤ人科学者(ナチスから逃れてアメリカに来た。そのせいでX線解析が遅れ、DNA二重螺旋構造の発見をワトソン/クリックに譲った形になったのは科学史の有名なエピソード)とのレッテルが貼られた。ネガティブ・キャンペインに躍起になった連中がいた。
 
 彼らがリードした「メイヨークリニックでビタミンCが癌に効かなかったとの結果が出た」という報道は、見出し報道的に広まり、無知な医療者はそれを信じた。ポーリング博士らは「静注・大量投与」で治療しているのに、メイヨーでは吸収量の知れている経口投与という異質な比較試験であったのにである。まさに情報操作であった。
 
 しかし、情報操作の匂いを感じた賢明な市民はだまされること無く、玉石混淆の代替医療の中から自身に必要なものを取捨選択し健康を自主管理するようになっていった。

 サプリメントを摂取し、教育程度のさらに高い者は、米上院マクガバン委レポートの警告などに従って、自然食や地中海食や日本の伝統食に範を摂った食生活改善を行い、癌を減らし(教育程度が低い、中流以下の庶民は、白人なら相変わらずの肉食・ドカ食いの故に、移民なら逆に栄養不良の故に、平均寿命は短くなり、その分は相殺されているのに)、寿命を延ばしてきた。
 今や日本での癌の増加とは反対に、アメリカでは癌が減少しているのだ。(エピデンスのない)検診事業は日本の方が圧倒的に盛んなので、これは「早期発見・早期治療」とやらのせいでは無論ない。

 今や医学の専門家なら皆知っていることだが、ありとあらゆる病態が活性酸素と関係を持つことが一般に認知されてきたのはごく最近である。ポーリング博士は正に21世紀を見通す先見の明があったと言えよう。
 
 不勉強な日本の一部の医師を除けば、かつて博士が提唱した分子矯正医学は、分子医学という名で基礎医学の中に基盤を有していることは周知の事実であるし、生物物理化学という分野がれっきとして存在する以上、大学病院の医師レベルになれば、外科であれ内科であれ、活性酸素への対策が、疾患のコントロールに関わるという知識を全く持たない者はなくなってきた。
 
 しかし、ビタミンCの大量点滴で、癌が副作用無く治るということは、欧米の自然療法クリニックで劇的緩解例を目の当たりにでもした者でもなければ信じられないというのが、大半の医師の偽らざる心情であろう。
 ところが、これを立証した論文がついに発表された、それも黙殺できないような形で発表されたのである。本書はこの論文を一般向けに解説したものである。
 
 それはPNAS=米国科学アカデミー紀要、すなわちThe Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaに掲載された、"Pharmacologic ascorbic acid concentrations selectively kill cancer cells: Action as a pro-drug to deliver hydrogen peroxide to tissues"(「薬理量濃度のアスコルビン酸はガン細胞を選択的に殺す:過酸化水素を癌組織へ移送するプロドラッグ作用」)という論文(PNAS 102:13604-13609 全文公開)である(→pdfプリントはこちら)。

 筆頭著者のQi Chenは米NIH(国立衛生研)の糖尿病・消化器/腎臓疾患研究所の分子臨床栄養部所属であり、他の共著者も、M.G.Espeyは米NCI(国立癌センター)の放射線生物学部、E.Shacterは米FDA(食品医薬品安全局)の医薬品評価調査センターの生化学研究室所属、つまり国立機関の研究者らが、情報操作や迷信を覆したのである。無論、この背後には「ビッグ・ファーマ」への対抗が感じ取られるし、危機的な医療財政を反映した動きも伏流していると思われる。
 
 血中濃度400mgを得るために50〜60gを点滴すれば、ビタミンC由来の過酸化水素が選択的にガン細胞を殺すが、正常細胞はカタラーゼのせいで全く障害を受けないことがこの論文ではっきりした。抗酸化剤が酸化剤にも成り得るからといった、もっともらしい空想による杞憂は、もはや完全に退けられた。
 
 もっとも、高単位ビタミンC療法自体は、森重福美先生などの実践が夙に知られており、日本でも過去行われてこなかった訳ではない。ただ自由診療や混合診療との絡みで公にしにくかったケースがあったり、ある種の抑圧のせいで情報が広まらなかっただけである。
 
 中央公論社から翻訳出版されたイアン・ブライトホープ『ビタミンCでガンと闘う—栄養療法による治療』は日本ビタミン学会の重鎮で、元・佐賀大学農学部応用生物科学科教授で農学部長でいらした村田 晃先生の訳で、叢書「現代栄養学の世界」シリーズの一冊として1983年に出ている。因みにシリーズ監修=企画はあの丸元淑生先生である。
 また、同じく村田先生の翻訳の、ブライトホープの『エイズ、ガンはビタミンCで治る』は1988年に徳間書店から翻訳出版されている。これらの中には、アスコルビン酸ナトリウムを使った点滴液の調製法がすでに記されていた。
 
 しかし、最新の、エピデンスのある一級の論文を一般向けに解説した労には頭が下がる。こうした紹介の労が、安価かつ安全で患者のQOLを向上させる療法として普及し、安保療法などと相まって、患者の免疫力向上による緩解に資するようになることを切に願うものである。
 
 ちなみに医療経済的に厳しい薬害肝炎治療であるが、ビタミンCの高濃度点滴なら、安価かつ効果が期待されることは、欧米の諸研究で既に明らかである。
 またガン治療としても、抗癌剤と併用しても問題なく、抗癌剤の効果を増強(=従って減薬できる)し、なおかつ副作用を減らせるといういいこと尽くめで、抗癌剤メーカーの利益も一気に損なわれるものではない=共存可能だという点でも、この療法の普及の上では正に理想的であると思う。

【追記】
 本ブログの旧記事「癌患者への抗酸化剤療法----放射線療法の効果を妨げない」もご参照下さい。
 ここでは CTCA(Cancer Treatment Centers of America:全米癌治療センター)のTimothy Birdsall副院長らが放射線療法への干渉リスクなしに必要な栄養補給を可能とすることを証明した話題と、それに併読していただく資料として、独・フーフェラント・クリニック(Hufeland Klinik)のWolfgang Wöppel院長が行っている「高用量ビタミンC療法--癌患者の免疫機能とQOLが改善」の記事を紹介しています。

 Wöppel博士の療法では,患者は入院中に1日1回1gのビタミンCを服用し、追加で平均1週間に1回7.5〜30gのビタミンC(Vitamin C-Injektopas 7.5g)の静注投与を受けています。これにより完全寛解するクリニックの患者の率は1/600だそうです。ちなみに無治療による自然寛解率は1/80000であり、通常医療の三大療法を行えば、エンドポイントは100%の死であり、寛解率は0である事を思えば、無意味な抗癌剤療法より遥かに希望が持てるでしょう。


なお、ビタミンC一般に関しては、以下の一般書・専門書を参考にしてください。

村田 晃『新ビタミンCと健康―21世紀のヘルスケア 』共立出版(1999)


ポーリング博士のビタミンC健康法 』平凡社(1995)


Pauling & Cameron『Cancer and Vitamin C 』(1993増補版)

木本 英治『l-アスコルビン酸カスケード』開成出版(1994)

三羽信比古『ビタミンCの知られざる働き―生体への劇的な活性化メカニズム』 丸善(1992)

三羽信比古『バイオ抗酸化剤プロビタミンC―皮膚障害・ガン・老化の防御と実用化研究』 フレグランスジャーナル社(1999)

またポーリングが対抗し、圧力も受けた、医療産業の実態を白日の下に晒した労作を紹介します。
マーシャ・エンジェル『ビッグ・ファーマ----製薬会社の真実』 篠原出版新社(2005)

著者はM.D. Ph.D.でNEJMの元編集長で現・ハーバード大医学部・社会医学科上級講師です。京大の福島教授の「刊行によせて」も是非お読みください。
ラルフ・モス『がん産業〈1〉―がん治療をめぐる政治的力関係の構図』


『がん産業〈2〉―予防の妨害と科学の抑圧』


モスはNIHの代替医療プログラム委員でした。彼が特に第2巻で暴露した製薬資本の妨害の実態を医療関係者は心して読み、知って頂きたいものです。なおビタミンC療法に関する記述が一部省略されているので、専門家の方で、興味を持たれた方は英原著に当たって下さい。
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