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ビタミンDと老人の疼痛との相関関係: キャンティ研究における「加齢」 [ビタミンD]

 Journal of the American Geriatric Society(2008;56:785-791)誌5月号に掲載された論文"Associations Between Vitamin D Status and Pain in Older Adults: The Invecchiare in Chianti Study"によると、高齢女性において、ビタミンDの低値は、背部痛と関連していることが、キャンティ研究の副産物として判明した。
 なお、キャンティ研究とは、イタリア保健省(Italian Ministry of Health)の援助を受け、一部、米国立衛生研究所(NIH)の国立加齢研究所(NIA)の援助も受けて行われている研究である。

OBJECTIVES: To examine cross-sectional associations between vitamin D status and musculoskeletal pain and whether they differ by sex. DESIGN: Population-based study of persons living in the Chianti geographic area (Tuscany, Italy). SETTING: Community. PARTICIPANTS: Nine hundred fifty-eight persons (aged ≥65) selected from city registries of Greve and Bagno a Ripoli. MEASUREMENTS: Pain was categorized as mild or no pain in the lower extremities and back; moderate to severe back pain, no lower extremity pain; moderate to severe lower extremity pain, no back pain; and moderate to severe lower extremity and back pain (dual region). Vitamin D was measured according to radioimmunoassay, and deficiency was defined as 25-hydroxyvitamin D (25(OH)D) less than 25 nmol/L. RESULTS: The mean age±standard deviation was 75.1±7.3 for women and 73.9±6.8 for men. Fifty-eight percent of women had at least moderate pain in some location, compared with 27% of men. After adjusting for potential confounders, vitamin D deficiency was not associated with lower extremity pain or dual-region pain, although it was associated with a significantly higher prevalence of at least moderate back pain without lower extremity pain in women (odds ratio=1.96, 95% confidence interval=1.01–3.59) but not in men. CONCLUSION: Lower concentrations of 25(OH)D are associated with significant back pain in older women but not men. Because vitamin D deficiency and chronic pain are fairly prevalent in older adults, these findings suggest it may be worthwhile to query older adults about their pain and screen older women with significant back pain for vitamin D deficiency.


【アブストラクト:Catsduke訳】
 目 的:ビタミンDの状態と筋骨格痛との横断的な相関関係およびそれらに性差があるか否かに関する調査。
 設 計:キャンティ地方の住人集団ベースの研究。
 設 定:コミュニティ 
 参加者:グレーブおよびバーニョ・ア・リーポリの住民票から選ばれた958人(65才以上) 

 測定法:痛みは<下肢痛は「なし」か「軽度」で、「中程度」から「激しい」背部痛あり><下肢痛は「なし」か「中程度」〜「激しい」下肢痛があって、背部痛なし><「中程度」〜「激しい」下肢痛があって、背部痛有り(=下肢+背部、両部位が痛む)>のように分類された。ビタミンDは放射性免疫測定法で測定され、欠乏症は25-ヒドロキシビタミンD (25(OH)D) 25 nmol/L未満と定義した。

 結 果:平均年齢±標準偏差は、女性が75.1±7.3、男性が73.9±6.8だった。男性は27%だったのに対し、女性の58%が中程度の痛みを少なくともいずれかの部位に有していた。潜在的交絡因子の補正後、ビタミンD欠乏症は下肢痛や両部位の痛みとも相関が無く、にもかかわらず、下肢痛の無い女性(オッズ比1.96, 95%信頼区間1.01–3.59)であっても、少なくとも中程度の背部痛とは有意に高い有病率の相関が見られた。ただし男性には見られなかった。

 結 論:低濃度25(OH)Dは老人女性の背部痛と有意に相関していたが、老人男性では相関が見られなかった。ビタミンD欠乏症と慢性疼痛は、老人の間では相当に蔓延しているので、これらの発見は、老人患者には「痛み」の有無について問診する価値があるだろうことと、ビタミンD欠乏症と有意に相関している背部痛を持つ老人女性をスクリーニングすべきことを示唆している。

 【コメント】
 キャンティ研究とは、イタリア保健省(Italian Ministry of Health)の援助を受け、一部、米国立衛生研究所(NIH)の国立加齢研究所(NIA)の援助も受けて、イタリアのキャンティ地方の老人を対象に行われている大規模疫学研究です。

 タイトルの" Invecchiare"はイタリア語でワインのエイジング=熟成に当たる言葉です。キャンティがイタリアのワイン名産地として知られる土地なので、一種の洒落として用いられたものでしょう。「老化」と直訳しておいてもよかったのですが、ワインのエイジングにはネガティヴな意味はない訳で、人間の老化を表す部分に敢えてこの語を使った精神に同感して、私は「加齢」と訳しておきました。


 なお、ビタミンDに関しては、以下の専門書・一般書を参考にしてください。

平柳 要『がん予防に実は「日光浴」が有効なわけービタミンDの驚きの効力』講談社+α新書(2008)



岡野登志夫『ビタミンDと疾患ー基礎と臨床からの考察』 医薬ジャーナル社(2000)



中村・松本・加藤『骨代謝と活性型ビタミンD』ライフ・サイエンス出版(2006)



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